物書きの私にとって、テレビなどメディア出演の依頼は嬉しい。取材へ出かけることはあるが、基本的には部屋に引きこもって原稿を書いているので、テレビの現場は物珍しくて楽しいのだ。
ところが最近、よく分からなくなってきた。テレビやラジオに出ることは長い目で見ると「損かもしれない」からだ。
疲れて締め切りを遅らせることも
2015年から2016年にかけて、いろんな番組に出てみた。依頼があればギャラ1万円でもラジオに出たし、本が出たときは深夜ニュースのゲストコメンテーターに呼ばれて出かけていった。われながら、結構な数のメディア出演をこなしたと思う。
もともと話すのは好きなので、テレビの現場は楽しかった。1回あたりのギャラはだいたい、テレビで3万円、ラジオで1万5千円。1か月に3~4回出れば10万円くらいの収入にはなる。しかし私は気づいたのである。メディア出演の仕事は、長期的に見て「儲からない」ということに。
まず、初めての現場の場合は、とても疲れる。どのような服装がふさわしいか前日の夜から頭を悩ませ、ラジオなどは当日スタジオに入るのに始発で出かけることもある。誰がいちばん偉い人か見極めてご挨拶するのも緊張するし、収録中はものすごく集中するので、終わったあとは15時間くらい寝てしまう。もちろん心地よい疲れではあるが、テレビのあとは肝心の「本業」の締め切りを遅らせてしまうこともしばしばあった。
テレビに出たら本の宣伝効果があるかと期待したが、出演後もAmazonの順位はほぼ変わらない。テレビを見る層と、本を買ってくれるファン層は別なのだ。