飲料関係の超有名財閥系大企業B社に勤める同級生S氏と食事をした時のことです。
空間デザインの専門家である彼は、中小企業規模の事務所から4年前、ヘッドハントで転職。今の会社では直営施設の空間デザイナーとして手腕を発揮しているのですが、会社の規模であまりに異なる企業風土について、おもしろいことを言っていました。
大企業は自然とつまらない人ばかりに
「大企業からは基本的におもしろいトップや幹部、リーダーは出てこないね。所詮はサラリーマンだからなのか。それが財閥系大企業の風土なのか。これまでの勤務先は、今とは比べものにならないほど小さかったけど、オーナー社長が個性的なのは当然として幹部にもおもしろい人がけっこういた。社内は毎度喧々諤々(けんけんがくがく)、ケンカ別れしたり志を持って独立したり、管理はなっていないけど、それはそれで刺激的な日々だった。B社は安定性と待遇はいいけど、刺激はない。中小企業のよさを、懐かしさとともに改めて感じる今日この頃」
彼のこの冴えた見立てをキッカケに、B社のトップやトップに近いリーダーたちが以前の職場に比べてなぜつまらないのかについて、我々はあれこれ意見を出し合いました。
その結果、S氏が経てきた会社の分析や私の経験から、多くの非オーナー系大企業が抱える組織状況は次のようなものなのではないのかという結論に至りました。
「会社が成長し組織が大きくなると、間接部門が整備されルールが作られ『抜けや漏れのない会社』になる。するとマネジメントが精緻に機能しはじめ、会社の方向性にかなった動きに徹する人が増える。この精緻なマネジメントの下で育った有能サラリーマンが社長のイスに座ると、トップ以下ほぼ全員が没個性の『まとまった』集団になり、加速度的につまらない組織になる。一方、おもしろい者は傍流に追いやられるか自主的に退出する。リーダー候補が主体的にあれをやろう、これをやろうと旗を振ったり、あるいはとんでもないアイディアを出してその実現に向けて奔走したりするような状況は、生まれにくくなる」
S氏は、4年間のB社生活でしみじみと感じたこの状況を捉えて、
「大企業には『余白』が足りない」
と表現しました。なかなかうまいことを言うものです。
思えば、私が以前働いていた銀行も大企業であり、「余白」のなさではダントツの業界ではなかったか。何より和を重んじ異端を嫌い、管理の上に管理を重ね、より銀行員らしく振舞った者のみが幹部選抜をクリアして組織の頂点を目指して登っていく。もしや「余白」ゼロ?