インドネシアで働いていた知り合いの若者が東京に転職するというので会ってきました。
彼は、私が2013年に書いた本『セカ就!』の登場人物のモデルの一人(あの本の登場人物は、海外で働く複数の人たちの組み合わせです)。当時、インドネシアの物流業の会社で本当に生き生きと働いていたので、どんなふうにキャリアを積んでいくのか楽しみにしていました。
替わりになる人が社内にいない
「これから、インドネシアに新規展開する会社に入ることにしました」
これから働くのは、日本の大手機械製造会社。インドネシア進出に当たって、会社の方針は「部品を日本から調達するのではなく、現地の会社から調達する」ということだそうです。これは、現地に利益を還元するという意味では美談でもあるのですが、現地で調達し販売したほうが物流コストを大幅に下げられるという、実利を伴う経営判断でもあります。
「最初は日本で仕事をしますが、インドネシアに駐在することを前提に採用されました。現地企業との交渉や、調整をすることになります。現地で今までやっていたことなので自信はありますが、会社の大きな期待を背負っているというプレッシャーも感じています」
彼は、まだ30歳。日本の大手企業であれば、まだチームリーダー的な仕事さえ任されていない人も多い年齢です。その歳で、会社が巨額の投資をするプロジェクトの重要な役割を任されるのは、彼に替わる人が社内にはいない人材だからです。
「インドネシア進出は初めてなので、インドネシア人と交渉したことがある人はいません。そういう点ではナンバーワンですね」
日本国内で日本人と交渉できる人は山ほどいます。その交渉力は、ベテランのほうが有利なことが多々あります。しかし、海外で外国人と交渉したことがある人はごく少数です。その経験が必要な職に関しては、年齢に関係なくトップの実力になることができるのです。