青学を常勝チームに育てた手腕 PDCAサイクル回し目標達成

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「コミュニケーション」と「目標」と

   原監督は、陸上競技を引退後、電力会社で売上げトップを記録する「伝説の営業マン」だったという逸話の持ち主です。原マネジメントのキーワードは営業です。ポイントは大きく2点。

   ひとつは、営業には欠かせない「コミュニケーション」。そしていまひとつは、営業についてまわる「目標」意識と、その「目標」達成に向けてPDCA(Plan、Do、Check、Action)サイクルを回す活動スタイルの徹底です。

   「コミュケーション」では、「話す」だけでなく「聞く」をクローズアップして、とにかく量を確保すること。監督は家族住み込みで選手たちと生活を共にし、圧倒的なコミュニケーション量の確保に努めているといいます。上意下達ではない常識破りのコミュニケーションスタイルが、選手との距離感を縮め強力な信頼関係を築く礎になっているのです。

   一方の「目標」では、単に数字を掲げるだけでなく、期限を設けて達成に向けて選手を動かすこと。その目標が達成されれば次なる目標と期限が定められ、達成できなければ新たなアプローチを検討する。いわゆるPDCAサイクルを回しながら、その繰り返しの中で個々の選手たちの記録を着実に伸ばしていき、成長を遂げさせていく。

   監督自らも「箱根駅伝に3年で出場、5年でシード権、10年で優勝争い」という明確な目標を掲げ、PDCAサイクルを回しながら選手を引っ張ってきた結果が今の姿なのです。

   やや斜に構えて私の話を聞き始めたT社長でしたが、母校の栄誉がいかにしてもたらされたかという分析を聞いて気分が悪かろうはずもなく、次第に真剣な顔つきに変わってきました。

「なるほど、いい話を聞きました。営業部隊強化は当社の今年一番の課題なのですよ。その話を早速幹部で共有して、やれそうなことを考えてみたいですね。さっそく原さんの本を買って読んでみます」

   そもそも営業での成功経験を駅伝チームに活かした話ですから、原監督の考え方を自社の営業チームづくりに引き戻す作業は比較的やりやすいのではないでしょうか。母校の活躍をヒントにT社長の営業チーム改革がうまくいったなら、その話は私にとってもセミナー等で使わせていただけそうだし、私自身も興味津々です。これからもT社長をフォローしながら、接点を持ち続けていこうと思っています。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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