父は言った、「よう考えや」と 派閥と派閥の間で戸惑う君も(江上剛)

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軍隊でのいじめに比べれば

   その夜、田舎の父に電話をして、上司に言われたことを話し、「もう、こんな銀行、辞めるわ」と言った。

   そうすると父は、「そうか。しかしなぁ、お前、なんぼ給料をもらってんねん?」と聞いた。私がいくらいくらだと答えると、

「茶、くんだくらいでそんなええ給料をもらえる会社はないで。よう考えや」

と言って電話を切った。

   軍隊で上官の理不尽ないじめに遭い、生爪を剥がされ、尻に大きく鞭の痕が残り、同僚の自殺を見ながらも、したたかに生き抜いてきた父にしてみれば、私の悩みなど小さなことだったのだろう。

   私は、上司に叱責を受けたことを職場の先輩に話した。すると先輩は、「くだらない派閥争いに若い者を巻き込まないでほしい」と上司に諫言してくれたのだ。それで上司はおとなしくなった。

   もしあなたの会社に私を助けてくれた先輩のような人がいたら、相談するといい。そういう先輩の一人もいないなら、そんな会社はさっさと辞めるか、私の父のアドバイスのようにしたたかに生きるべきだね。

   いずれにしても、どちらかの派閥に入るってことは自分の会社人生をその派閥の命運に委ねるということ。もし属した派閥が発展すればあなたは成功。衰退すればあなたは失敗。

   こんな丁半博打に賭けてみるのも、人生としたら、面白いかもね。(江上剛)

江上 剛
江上 剛(えがみ・ごう)
作家。1954年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行築地支店長などを務める。2002年『非情銀行』で作家としてデビュー。03年に銀行を退職。『不当買収』『企業戦士』『小説 金融庁』など経済小説を数多く発表する。ビジネス書も手がけ、近著に『会社という病』(講談社+α新書)がある。
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