人の評価は時代とともに変わる ゆえに基準の変化に敏感であれ(高城幸司)

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   米国のトランプ政権発足から、世の中の動きが激しくなる予感を示唆するような論調がマスコミを賑わすようになってきました。

新トップは自分のカラーを出すもの

激動のもとはこの人なのか
激動のもとはこの人なのか

   確かに、その兆候は日本にも見られます。過去のスタンスではありえなかった安倍政権の韓国に対する強気な姿勢。あるいは民間企業の世界に目を移すと、倒産件数に占める業歴30年以上の老舗企業の割合が急増。「昔ながらの商品構成や経営が時代にマッチせず行き詰まったケースが目立つ」という(東京商工リサーチ調べ)。会社を大きく変える覚悟を経営者はもたなくてはならない時代がやってきたといえるのではないでしょうか。

   会社を変えるタイミングとされるのが経営トップの交代です。交代して着任する経営トップは「新しいことをやりたい」と思うもの。それが「××カラー」と呼ばれたりします。

   そうやって新たなカラーを打ち出そうとすると、起きるのが過去の方針の見直しであり、生じるのが過去を否定することをよしとする雰囲気です。

   というのも、今までと同じやり方を踏襲してうまくいったとしても、「あの人は新しいことに対する挑戦心がない」と言われてしまうからです。それゆえ、経営者は必ず、自分がトップになったのを機に自分のカラーを打ち出そうとするのです。

   例えば、サッカー日本代表監督のハリルホジッチ氏が「フレッシュな選手の積極起用」を明言し、これまで活躍してきた本田選手や香川選手といった、日本国民なら誰もが知っているスター選手を先発メンバーから外すと、マスコミや評論家は「自分のカラーを出そうとした」と高い評価をしがちです。周囲の評価を気にすることも相まって、トップの打ち出す「新たなカラー」は過去の否定、ないしは過去と真逆のものになるのかもしれません。

常に「優秀」であり続けるには

   こうして、会社が変わるならば職場で働く社員も変化に備える覚悟と、対策を考えておくべきです。なかでも変化の一翼として社員が押さえておきたいのが人事評価です。

   時代が変わり、会社の経営方針や世の中のニーズが変化すると社員に対する人事評価の基準も変わります。もはや、成果主義も時代遅れ、その行動を可視化した指標=KPI(Key Performance Indicators)を重視する傾向が高くなっています。日本語では「重要業績評価指標」と訳され、目的を達成するための過程を計測するための中間目標となります。

   会社が求める業績を達成するためには、様々な過程を経ていかなければいけません。その最終目標を達成するために不可欠な過程を洗い出し、過程をどのくらいの状態で通過できれば、最終的な目標が達成できるか、そしてしっかりとクリアできているかどうかを数値で計測するための指標です。

   ところがKPIも、会社の業績との連動は個人ベースまでは難しいとの観点から、導入してやめる会社が出ています。業績達成のために設定したKPIがどんどん増えていって管理が困難になった。あるいは業績との関連を追いかけてみると、関連性が高くないとの結果になってしまった......と当初の思惑のようには機能しないため、活用を断念するようです。

   あるいは、評価項目の追加変更。最近はグローバル化をめざして「語学力」など求められるスキルを評価に加える会社も少なくありません。

   いずれにしても人の評価は時代とともに変わります。だからこそビジネスパーソンは世の中、つまり会社が求める「評価基準」とは何たるかを常にウォッチし、そのメッセージを見逃さないようにしながら仕事をしなくてはなりません。時代が求める評価基準を観察し、自分の中にアドオンしていくこと。それができる人が、変化に強く、時代が変わっても「優秀」であり続けることができるのです。

自動的に「過去の人」にも

   例えば、ある大手の飲食チェーンの店長の人事評価で重要な項目に組み込まれていたのが「在庫ロス率」でした。本社に発注した食材の在庫を余らせると、評価を大きく下げることになっていたのです。そうなると、無駄な在庫を出さないために、お客様からオーダーされたメニューであっても、在庫がなければ「すみません、品切れです」とお断りして、新たに発注しない。意図的に在庫を作らないことが正しい活動と認識されることになります。

   ところが、経営陣が変わると在庫ロスが重要な項目から外れて、代わりに「一人当たりの注文数」が評価基準に入りました。経営陣が業績をあげるため消費金額をあげることを重要な戦略に掲げたからです。

   この方針変更に対して、品切れを起こさないように(在庫ロスを増やすほどの過剰在庫は不要)本社への発注スタンスを変える店長と変えない店長がいたようです。その後、高い人事評価でエリア店長へと昇格していったのは経営陣の求める評価基準で高い成果をあげた人物でした。

   さて、今現在、自分が「優秀」と評価されていたとしても、どれだけその「評価基準」が長持ちするのか、また時代や会社の方針にマッチしているのかどうか、常に考えなくてはなりません。自分の「評価基準」が陳腐化していると思えば、惜しげもなく捨てたほうがいい。

   場合によっては、古き良き「評価基準」を持っていることで、自動的に「過去の人」と思われ、周りから忘れ去られてしまう可能性もあります。自分が今備えている「評価基準」を前面に打ち出し続けていると、逆に後戻りができなくなり、自分にとって厳しい状況になる危険性があることを、認識しておくべきです。(高城幸司)

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
「高城幸司の社長ブログ」
株式会社セレブレイン
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