若者が結婚するにはお金が必要 どうすれば状況が変わるのか(ライフネット生命・出口治明)

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   若者が結婚しないといいます。「結婚してもいいことがない」「一人のほうが気楽でいい」、いろいろな声が聞こえてきますが、行き着くところは、20代が貧しいということではないでしょうか。経済が成長せず20代が貧しかったら、当然ながら結婚は難しい。

   社会にはいまだに「嫁をもらって家を建てるのが男の甲斐性」といった古い考え方が根強く残っているので、この収入ではとても結婚できないと尻込みすることもあるでしょう。

  • 若い人がどんどん結婚する社会にするには
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子育てを終えた世代より、これから子育てをする世代が貧しい

   厚生労働省の2014年調査を見ると、29歳以下の1世帯当たりの平均所得額は316万円で、平均の529万円を大きく下回っています。子育てを終えた60代(532万円)、70代以上(396万円)にも遠く及ばない数字です。これが今の日本の実態です。これでは若者が、結婚して子どもを産んで育てて、と積極的になれないのも無理はありません。

   もう一つ、豊かな親が子どもの甘えを許しているという側面もあると思います。学校を卒業して働き始めた子どもが、なかなか親の家を出て行かない。

   僕は3年間ロンドンで勤務しましたが、連合王国では18歳になったら家から出ていくのが普通です。子どもも、その歳を過ぎて家にいたら格好悪いという自意識があるのです。お金がないので4人とか6人とかでルームシェアをして、その中で男女の出会いが始まったりします。自炊して、洗濯をして、掃除をして不便を味わうと、一人暮らしは大変だ、不経済だと身にしみて分かり、自然とカップルができます。動物の世界では成人した子どもが親離れをしないというのは不自然で、それがさらに結婚しないという不自然さを招いているようにも感じられます。

年齢フリーの社会を実現できれば

   では、20代が貧しい状況をどのように変えていけばいいのでしょうか。

   一つのポイントは同一労働同一賃金です。これは、年齢フリーの社会を実現するということでもあります。今の状況では、あまり働かないおじさん、おばさんが高い給与をもらっていて、若い人の給与が相対的に抑えられています。同一労働同一賃金となれば、年齢を問わず同じ仕事に対して同じ給与が払われるのですから、意欲と体力の勝負になります。若い世代にとっては歓迎すべき方向といえるでしょう。

   外国では若年層の高い失業率が問題になっていますが、それは社会が不安定で、落ち着いて仕事ができないからです。加えて、移民や難民の問題もあるでしょう。日本は状況が異なり、基本的に人手が不足しています。

   1947年から1949年生まれの団塊の世代は、1学年あたり200万人を優に超える。一方、現在の新卒者は毎年100万人ちょっとです。徐々に交替していくと見ても、労働力不足は歴然としています。このままいくと、2030年には約800万人もの労働力が不足すると見積もられています。僕も団塊世代の一人ですが、同級生を見渡すと、半分ぐらいはまだ働いているでしょうか。でもみんな「昔のようには働けない」と言いますし、いずれはリタイアしていくでしょうから、若い世代の雇用状況が悪くなるはずがありません。

   また、「飯、風呂、寝る」の長時間労働の世界から、「人・本・旅」で勉強して「アイデアが付加価値を生む」社会への変化が、若い世代の収入増を後押しするでしょう。今の情報化社会でセンスを競うのであれば、中高年よりも若い人のほうが絶対に有利です。終身雇用・年功序列社会の「黙って言われた通りに働く」社員が重用されなくなれば、若手の活躍する場が広がります。

   では、同一労働同一賃金は、どうすれば実現するのでしょうか。(出口治明)

出口治明
出口 治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険株式会社創業者。1948年三重県生まれ。京都大学卒業後、1972年に日本生命保険相互会社入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを歴任。2008年、ライフネット生命保険株式会社を開業。著書に『生命保険とのつき合い方』(岩波新書)、『働く君に伝えたい「お金」の教養--人生を変える5つの特別講義』など。
2018年1月から、立命館アジア太平洋大学学長、学校法人立命館副総長。
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