観光資源という発想も必要
また、総合職には、製菓というくくりだけではなく、観光資源という発想も必要でしょう。単に商品を売るだけでなく、観光資源として観光客を集めるにはどうすればいいか、という視点です。
廣榮堂は、築150年の古民家を岡山市内に移築し、店舗として再生しました。豆子郎は、山口市にある本店に「豆子郎の里 茶蔵庵」を併設しています。落ち着いた雰囲気の喫茶スペースには所蔵品が展示され、窓外に庭園をながめることができます。
廣榮堂や豆子郎は、ともに、和菓子を売るという商売だけではなく、観光資源としても地域に寄与したいという発想があるからこそ、このように力を入れているのではないでしょうか。
新聞の株価欄を開いてみてください。東証1部の食品カテゴリーは、知っている企業が多数、掲載されているはず。
就活講演などで学生に企業チェックをやらせてみて、ほぼノーマークとなるのが、イートアンド、わらべや日洋、寿スピリッツです。
イートアンドは大阪王将の運営企業。冷凍食品の製造・販売もビジネスなので食品カテゴリーになっています。わらべや日洋はすでにご紹介したセブン‐イレブンのコンビニベンダー。
そして、寿スピリッツは、米子市が本社の「お菓子の総合プロデューサー」(同社サイトより)です。「九十九島せんぺい」(長崎)、「神戸白いチーズロール」などを製造する傘下企業を北海道から九州まで、17社(台湾を含めると18社)擁しています。
製菓メーカーとは違いますが、こういう企業もあるのです。
お菓子のプロデューサーということでは、卸流通事業の山星屋も紹介しておきましょう。丸紅系で、菓子メーカー1000社と流通500社以上をつなげるパイプ役です。ここで、
「単なる問屋でしょ」
と、考えた学生は東京湾にでも沈んでいただきましょう。なぜ、東京湾か、といえば、同社はディズニー関連のお菓子の権利を持っています。つまり、製菓大手がディズニー関連のお菓子を出そうとしても同社を通す必要があります。あるいは、山星屋が企画をすることもあります。
同社では、1~2月に営業業務を体験するインターンシップを実施するとのこと。
2017年は、大手から中小まで1日インターンを展開するようになってきます。製菓関連も同じで、今回ご紹介した企業では、チロルチョコ以外は廣榮堂、宗家源吉兆庵、豆子郎などの地方企業を含め、その大半が実施しています(一部は2日間ないし3日間)。小さな企業も同様で、従業員数30人規模の大橋珍味堂(滋賀県近江市=柿の種など)も1日インターンを実施予定とのこと。
製菓業界志望の方はいろいろと探してみるといいでしょう。(石渡嶺司)