器用貧乏なんて誰が言うのか 気楽に仕事頼めるあなたは貴重(江上剛)

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「上から『器用貧乏』だと言われます。なんでもできるようでいて、どれもちょいと足らないという感じらしいのです。何か一つに打ち込んで取り組むべきでしょうか」

   あなたはなんでもそつなくこなす人なんだろうね。だから器用貧乏と言われてしまう。

  • 「これぐらい軽い軽い!」と器用にこなすから
    「これぐらい軽い軽い!」と器用にこなすから
  • 「これぐらい軽い軽い!」と器用にこなすから

いつも余裕ある空気を漂わせ

   でもそつなくこなすのに器用貧乏と言われて悔しくはないか。仕事ひとつまともにできない人が、面白い奴と評価され、あなたのように陰ひなたなくちゃんとやれる人が評価されないなんて不当だ!

   こんな風に怒ってみても評価は評価、甘んじて受けるしかない。

   「どれもこれもちょいと足らない」なんてどういうことだろうか。

   あなたはどんな依頼仕事も水準あるいは水準以上の出来でこなしてしまうから、いろいろと頼まれるんじゃないの? だから器用貧乏って言われるんでしょう?

   ちょいと足らないとなると、水準以下の出来ってことになる。それでは不器用なのに頼まれたら嫌と言えずなんでも引き受けてしまう単なる人のいいおっさん(あるいはおばさん)なんじゃないか。

   自分で器用貧乏と思っているだけではないのかな。

   ちょっと追加の書類作成があるとする。上司は、誰に頼もうかなと思っている。Aが担当なのでAに頼むべきなのだが、なんだか忙しくしている。それであなたを見ると、なんだか余裕のある顔をしている。あなたは何を頼んでも嫌な顔をしない。そこでつい「おい、ちょっとこれを手伝ってくれるかな」と上司は言う。あなたは「はい」と言って立ち上がる。

   こんな職場の風景が想像されるけど、間違っていないかな。Aたちは、忙しくするのが得意なんだ。あなたは違う。いつもなぜか余裕のある空気を漂わせているんだ。だからなにかと専門外のことを頼まれてしまう。

江上 剛
江上 剛(えがみ・ごう)
作家。1954年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行築地支店長などを務める。2002年『非情銀行』で作家としてデビュー。03年に銀行を退職。『不当買収』『企業戦士』『小説 金融庁』など経済小説を数多く発表する。ビジネス書も手がけ、近著に『会社という病』(講談社+α新書)がある。
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