AI(人工知能)やクラウドの活用で、様々な現場で省力化が実現している。ソフトバンクのAI搭載ロボット「Pepper」を接客や受付に利用する企業が増えているのがいい例だ。
そんな中、各種のクラウドサービスを用いて省力化を突き詰め、総務の仕事を1人でこなしている会社がネットに紹介された。記事のタイトルは「総務は1人で十分こなせる」という挑発的なもので、これが物議を醸している。
クラウドサービスを使いこなし
同記事は、日経ビジネスオンラインに掲載された(2016年12月5日)。基幹システムを販売するスマイルワークスの坂本恒之社長の、
「クラウドを駆使すれば大企業でも1人で十分こなせる。できない理由があるとすれば、仕組みの問題ではなく、部門の既得権益だろう」
という、間接部門についてのコメントを引用した上で、スキャンマンという50人規模のスキャン代行会社は、総務部門をたった1人で担当していると紹介。
主な作業は社外文書作成、経費精算、社員教育、電話応対、契約書のリーガルチェック、労務管理・勤怠管理、出入金管理、業務報告書・日報管理とたくさんあるが、担当者の久保田ゆみえさんは、10のクラウドサービスを使いこなし、管理業務に徹しているという。
クラウドサービスのフル活用を前提に業務プロセスが設計されているため、無駄がなく、「規模が大きくなっても私だけでやっていけそう」と久保田さんは胸を張る。
ルーチンだけならできるけど...
実際に1人で総務を受け持っている企業があるのは分かったが、「1人で十分こなせる」と言い切る断定調には反発を感じた人が多いようだ。
この記事に対しツイッターでは、
「うちの課、総務なんだけど15人中3人病欠やらなんやらで不在にしてるし来年から他の人じゃ業務内容わからないことやってる人が1人産休入るし、更に他所の係がこれから繁忙期だから1人応援に行ってくれとか言われるし、総務は1人でできるじゃねーっての」
「そりゃ、ルーチンだけだったらある程度自動化できるけどさぁ...社用車のスタットレス交換とか換気扇修理とかクレーム対応とか変な仕事飛んでこなけりゃ」
「年末調整の見本を添えても『ねぇここどうやって書くの?』と聞いてくる奴を叩き落とし、締め日までに提出しない奴の書類を待たなければやれる。総務は本当に『その他』が多いんすよね......」
など、総務の現場を知る者からの「多様な雑務がありすぎてムリ」という声をはじめ、
「現場側から言わせて貰えば『実務作業者が実務以外もやる前提のシステムだよね?』としか」
と、総務以外の前線の部署からの冷ややかな見方も。
「病気になったり辞めたり引き抜かれたりしたらどうするの?」「有給休暇は取れないの?」という疑問や、1人に権限を与えるリスクへの不安視も多くみられる。
反響を受け、日経ビジネスオンラインでは改めて久保田さんへのインタビュー記事を掲載(16年12月9日)。
自分が休んだり、いなくなったりしても、他の社員が代わって仕事ができるような体制が整っていて、残業も年末以外はほとんどないとのこと。
確かにスキャンマンでは1人に負担がかかりすぎないような運用が実現しているようだし、クラウドサービスが有用なのも分かるが、どの企業でも総務1人が可能かと問い詰められると、首をかしげる人が多そうだ。(MM)