この連載「シューカツ異種格闘技戦」が100回目を迎えた石渡です。回数では、私の連載の中でもっとも長いものになり、うれしい限りです。今後ともよろしくお願いします。
「知っておいてもいい企業」シリーズ4回目は、皆さんが普段使いをしていらっしゃるコンビニを取り上げます。それも、コンビニそのものではなく、コンビニを縁の下で支える各種の企業を紹介します。
「中食」を送り込むベンダーたち
コンビニで、おにぎり、サンドイッチなどの「中食」を買う方は多いでしょう。コンビニに商品を納入する企業(業者)をコンビニベンダーといいます。おにぎりやサンドイッチ、弁当などもコンビニベンダーが製造、納入します。
武蔵野、武蔵野フーズ、武蔵野ロジスティクスなどを傘下にもつ武蔵野ホールディングスはセブン‐イレブン系列のベンダー。中核の武蔵野だけで、全国に16工場を稼動、1日約250万食を製造します。
同社は、超ロングセラーとなった、ツナマヨおにぎりを開発したベンダーでもあります。今でこそ定番になっているツナマヨ。初登場の1983年当時、まさかこれほど売れるとは開発者も考えていなかったのではないでしょうか。
シノブフーズは、ファミリーマートなどに納入しています。1979年に「おにぎりQ」を開発。当時としては画期的なパラシュート式(内袋を引っ張り出してご飯と海苔を一体化)を採用し海苔のパリッとした食感を実現しました。1998年からは、現在のセンターカット方式に変更しています。本社は大阪ですが、商品開発部門を全国に設置、地域性にこだわり「地域密着型」を目指しています。
おにぎり、サンドイッチ、弁当のベンダーは他にもわらべや日洋(セブン‐イレブン系で1日最大600万食を製造)、トオカツフーズ、グルメデリカなど多数あります。
コーヒーマシンを製造する名門企業も
セブン‐イレブンがセルフ式コーヒーマシン「セブンカフェ」を設置し、販売を開始したのは2013年。1杯100円という手軽さが受け、大ヒット。現在では年間7億杯を売り上げる販売実績といわれています。
このコーヒーマシンを製造しているのが、富士電機です。重電(大型電機機器)分野では準大手。日立製作所、三菱電機、東芝などの大手と比べても、技術力に遜色はありません。1923年創業の名門で東証1部上場企業なのですが、就活における学生からの人気は大手3社とは比べものにならない、皆無に等しいといっていい状態です。
同社はコーヒーメーカーマシンだけでなく、JR東日本管内の次世代自動販売機(商品画像が切り替わるので目立つ自販機です)を開発するなど、自販機では国内シェア1位。地熱発電機器では世界シェア1位でもあります。
就活シーズンが到来すると、高速バスや飛行機で移動する就活生も増えるでしょう。その支払いを、コンビニで済ます方も多いはず。コンビニの収納代行サービスを展開しているのがウェルネット。プリペイド型電子マネーや電子チケットも展開しています。
同社は、単独での従業員数が83人(2016年6月30日現在)。小規模ながらも堂々たる東証1部上場企業です。
「風が吹けば、桶屋が儲かる」と昔からいいます。何かの変化が、一見すると関係ないような分野にまで影響を及ぼすたとえとして使われます。さて、コンビニでいえば2016年12月、無人精算システムの開発がちょっとだけ話題になりました。
ローソンとパナソニックが共同開発した「レジロボ」がパナソニック守口工場の近くにある「ローソンパナソニック前店」に試験的に導入されました。これを利用すると、かごをレジに置くだけで精算ができ、袋詰めまでしてくれます。ローソンでは2018年以降の展開を目指す、とのこと。
こうした無人精算システムは、他チェーンでも導入が進むでしょう。初期投資こそかかりますが、人件費を圧縮することができます。無人レジの導入が進めば、パナソニックが業績を伸ばすことが予想されます。
このニュースで、それ以外のポイントはどこかといえば、電子タグでしょう。ローソンとパナソニックのシステムでは、商品のバーコードをかごのセンサーで読み取る必要がありますが、商品に電子タグを付ければその手間が省けます。
この電子タグの大手がサトーホールディングス。バーコードなど自動認識システムでは世界でもトップクラスの企業です。はたして「桶屋が儲かる」の例にあずかることができるでしょうか。
コンビニは学生にとって身近な存在です。チェーンや有名な食品メーカーなどに目が行くのも当然でしょう。ですが、今回紹介した企業のように、目立たないところでコンビニを支えている企業があるのもまた事実なのです。(石渡嶺司)