物欲失せても欲の総和は不変か 満たすために走り続ける他なし

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「あるとき、急にむなしくなる」

   「物を買いまくっていると、あるとき、それがとてもむなしくなるの」先輩は言った。人間の欲望を100とすると、100のうちすべてを洋服にかけている期間が永遠に続く人もいるが、それがある時から50に減り、残りの50を「無農薬野菜で料理を作る」とか「手作りジャムを瓶に詰める」とか、そういう方面の欲望で満たすようになる人もいるのだろう。

   私も似ている。何かが欲しいという思いはあるが、今は洋服ではなく、見た目の若さや美肌など、モノ以外の価値が欲しい。洋服にお金をかけていた分が、美容整形に変わっただけともいえる。

   物欲にも、質量保存の法則みたいなものがあるのだろうか。100ある欲望のうち、若い頃は分かりやすい「モノ」にそのすべてが向けられていたとしても、年をとるにつれて、それが「30、30、40」とか、「50、50」に分散されていくのかもしれない。

   しかし結局、100の欲望があることには変わりないので、それを満たすためになんだかんだ奔走することになる。欲望をゼロにすることは、私には無理。まだまだ走り続けることになりそうである。(北条かや)

北条かや
北条かや(ほうじょう・かや)
1986年、金沢生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。近著『インターネットで死ぬということ』ほか、『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』などがある。
【Twitter】@kaya_hojo
【ブログ】コスプレで女やってますけど
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