CM・広告で見かけるあの会社 【知っておいてもいい企業3】

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   日本人が知っておいてもいい企業シリーズ3回目の今回は「CM・広告でよく見かける企業」。テレビにCMを大量投下していたり、意外な場所に広告を出していたり、それらを見たことはあっても業務内容まではよく分からない、という企業をまとめてみました。

球場や空港・駅でおなじみの

リョービのオリジナルキャラクターを紹介するページ(同社サイトより)
リョービのオリジナルキャラクターを紹介するページ(同社サイトより)

   広島東洋カープの本拠地Mazda Zoom-Zoom スタジアム広島のバックネットフェンスに企業ロゴ「RYOBI」をあしらった広告を出しているのがリョービです。ここだけでなく東京ドーム(バックスクリーンの左右)にも出しています。カープファンならずとも、見たことある方は多いはず。

   球場以外にも広島、羽田などの空港、福山などの駅にも出しています。こちらは、企業ロゴだけでなく、家族を描いたイメージキャラクターのイラスト付き。「崖の上のポニョ」などのジブリアニメで作画監督を務めた近藤勝也氏が手がけたもの。

「リョービグループのコーポレートメッセージ"「くらしごこち」がテーマです。"を皆さまにわかりやすくイメージしていただくために、1999年4月より起用しているオリジナルキャラクターです」(同社サイト)

   さて、このリョービがどんな企業かというと、自動車部品などで使われるダイカスト(特殊鋼の金型による鋳造で高精度の鋳物を大量に生産)の国内トップメーカーです。取引先の自動車メーカーは国内にとどまらず、海外のメーカーにも納入しています。ほかに印刷機器や住宅機器(ドアクローザー)、パワーツール(電動工具)なども事業展開しています。本社は広島県府中市。

   リョービは1990年代まで釣り具、ゴルフクラブなども手がけていました。それもあって、スポーツ番組にCMを出したり、球場広告もセ・リーグの全本拠地球場に出していました。その後、不採算だったこともあり、釣り具は2000年、ゴルフ用品は2002年に事業から撤退。球場広告も一度、全て引き揚げましたが、その後、2球場に復活。2016年の広島の「神ってる」活躍を考えれば、広告効果は十分だったかもしれません。

Youtube動画で社名を連呼

   動画広告の量が増えているYoutubeでここ数か月、よく見かけるようになったのが、ミスミ。セリフの8割近くが「ミスミ」という社名連呼型のCMです。では、ミスミとはどんな会社なのでしょうか。

   東京証券取引所には「ミスミグループ本社」で登録。同社の中核がミスミであり、FA用部品、工業用素材、金型用部品などの機械系専門商社です。カタログ注文にも対応。

「注文される商品のアイテム総数は、実に兆の数百億倍にものぼります。それほどの数の商品を、通常2日、急ぎは1日出荷でお届けしているのです」(同社新卒サイトより)

   「兆の数百億倍」というのがどの程度の規模かは想像もつきませんが、幅広い品ぞろえの商品を短期間で納入するビジネスが当たっている、ということのようです。

   「どうせ何の会社かわからないだろう」と開き直っているのが、日清紡ホールディングス。CMできゃりーぱみゅぱみゅが歌っています。

「日清紡~、名前は知っているけど~、日清紡~、何をやっているかは知らない~」

   それを、背広を着た犬(日清紡社員という設定)が聞いて「やっぱり」と落ち込む、というオチ。大物を起用するあたり、かなりのお金を企業名アピールに投資しています。以前にも深田恭子、堀北真希などを起用していますので、もともとCMには積極的な企業です。

   日清紡ホールディングスは、中核となる日清紡の設立が1907年という歴史があります(当時は日清紡績)。紡績・繊維関連の企業でした。現在は、なお繊維事業も展開しているものの、主力は自動車のブレーキ材で、こちらはヨーロッパ大手を買収したこともあり世界シェア1位。そのほかにも事業を多面展開しています。同社の新卒サイトでは、次のように、うまい表現で自己紹介しています。

「日清紡は100年以上の歴史を持っている『大家族』です。長女の『テキスタイル事業』、長男の『ブレーキ事業』。『ペーパー事業』、『メカトロニクス事業』、『ケミカル事業』と続き、そして末っ子の『エレクトロニクス事業』。時代の変化と共に、日清紡家族には様々な物語が発生しました」

知名度低いが人気番組にCM

   インパクトという点でCMの印象が大きいのは日本ゼオン。何しろ全国放送、かつ高視聴率のニュース番組「真相報道バンキシャ!」でCMを流しています。

   いろいろな部門で働く社員が次々に登場し「ゼッ、オーン!」と強調するあたりは、社名を知ってほしい、という願いが込められているような気がしてなりません。同社は自動車用タイヤなど合成ゴムの大手企業です。

   人気番組ということでは、以前「開運!なんでも鑑定団」にCMを出していたのが、村田製作所。「恋する部品製作所」というコンセプトで、ロボットが踊っているものでした。同社は携帯部品も手がけている大手企業です。

   ここまで5社、見てきました。テレビCMや球場広告は出稿するだけで多額の費用がかかります。それができる、ということはそれだけ優良な企業であると言えます。もちろん、新興の企業が知名度を上げるために無理をして出しているというケースもなくはないのですが、CMを出せるということは、ある程度の業績・伝統があり、それだけの体力がある、と見ていいでしょう。実際、今回紹介した5社はいずれも東証1部上場企業です。

   部品関連メーカーだと知った途端に「なんだ、大手の下請け会社か」と落ち込む学生もいますが、それは間違っています。ま、百歩譲って「下請け」であるとしても、最強の下請けです。

   なぜ最強かといえば、日本のメーカーだけでなく、海外のメーカーにも部品を供給しているからです。つまり、日本メーカーの業績が落ち込んでも、海外メーカーの売上げを伸ばせば業績は、そう大きくは変わりません(その逆もありえます)。

   たとえば、2016年夏ごろから、韓国・サムスン電子のスマートフォン、ギャラクシー7が火を噴く事件が起き、結果、サムスンは売上げを大きく落としてしまいました。韓国の部品メーカーでも、サムスン電子や韓国メーカーとしか取引をしていない企業であれば、同じように売上げを下げ、リストラや新卒の採用中止などを余儀なくされる羽目になるかもしれません。

   一方、日本の部品メーカーはどうか。実はギャラクシー7に部品を供給していた一社が村田製作所です。同社はリストラ・新卒採用中止などに踏み切ってはいません。なぜか。ギャラクシー7に部品を供給する一方、iPhone7にも部品を供給しているからです。どちらかが売れてくれれば補いがつきます。

   日本のメーカーはそんなしたたかさも持っています。そうした企業がCMを流しているわけですから、体力がある証拠。気になるCMの企業がどんな事業を展開しているか調べてみると面白いですよ。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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