知名度低いが人気番組にCM
インパクトという点でCMの印象が大きいのは日本ゼオン。何しろ全国放送、かつ高視聴率のニュース番組「真相報道バンキシャ!」でCMを流しています。
いろいろな部門で働く社員が次々に登場し「ゼッ、オーン!」と強調するあたりは、社名を知ってほしい、という願いが込められているような気がしてなりません。同社は自動車用タイヤなど合成ゴムの大手企業です。
人気番組ということでは、以前「開運!なんでも鑑定団」にCMを出していたのが、村田製作所。「恋する部品製作所」というコンセプトで、ロボットが踊っているものでした。同社は携帯部品も手がけている大手企業です。
ここまで5社、見てきました。テレビCMや球場広告は出稿するだけで多額の費用がかかります。それができる、ということはそれだけ優良な企業であると言えます。もちろん、新興の企業が知名度を上げるために無理をして出しているというケースもなくはないのですが、CMを出せるということは、ある程度の業績・伝統があり、それだけの体力がある、と見ていいでしょう。実際、今回紹介した5社はいずれも東証1部上場企業です。
部品関連メーカーだと知った途端に「なんだ、大手の下請け会社か」と落ち込む学生もいますが、それは間違っています。ま、百歩譲って「下請け」であるとしても、最強の下請けです。
なぜ最強かといえば、日本のメーカーだけでなく、海外のメーカーにも部品を供給しているからです。つまり、日本メーカーの業績が落ち込んでも、海外メーカーの売上げを伸ばせば業績は、そう大きくは変わりません(その逆もありえます)。
たとえば、2016年夏ごろから、韓国・サムスン電子のスマートフォン、ギャラクシー7が火を噴く事件が起き、結果、サムスンは売上げを大きく落としてしまいました。韓国の部品メーカーでも、サムスン電子や韓国メーカーとしか取引をしていない企業であれば、同じように売上げを下げ、リストラや新卒の採用中止などを余儀なくされる羽目になるかもしれません。
一方、日本の部品メーカーはどうか。実はギャラクシー7に部品を供給していた一社が村田製作所です。同社はリストラ・新卒採用中止などに踏み切ってはいません。なぜか。ギャラクシー7に部品を供給する一方、iPhone7にも部品を供給しているからです。どちらかが売れてくれれば補いがつきます。
日本のメーカーはそんなしたたかさも持っています。そうした企業がCMを流しているわけですから、体力がある証拠。気になるCMの企業がどんな事業を展開しているか調べてみると面白いですよ。(石渡嶺司)