答えられないのは当たり前
私は、昔からこのインターンシップ制度に疑問を持ち、何かいいものができないかと考え立ち上げたのが、実践型海外インターンシッププログラムのサムライカレープロジェクトです。既存の会社に入るのではなく、インターンシップを受け入れるために作った会社に来てもらって経験を積んでもらうというモデルです。
この会社は、教育のためにあるので受け入れている期間、学生にマーケティング手法から資料のまとめ方、外国人とのコミュニケーションの取り方まで、しっかりと教育を行います。学生が受講料を支払って来るので、本来の意味では、海外研修プログラムなのですが、「労働に従事しながら、経験を積んでもらう」というインターンシップの目的に合致しているため、「実践型海外インターンシップ」という名前にしました(ちなみに、欧米でも半数以上のインターンシップは無給といわれています)。
就活に臨む学生の多くが、最初の「自己分析」の「自分はどんな仕事に向いているのか?」でつまずきます。「仕事をしたことがない人はどんな仕事がしたいか分からない」からです。例えば、ボールを投げたことも蹴ったことも、走ったことも、泳いだこともない人に「あなたはどんなスポーツに向いていますか?」と聞いても答えられないようなものです。
それと同様に営業も、マーケティングも、生産管理も、人事も、会計もやったことがない学生に「あなたはどんな仕事に向いていますか?」と聞いても答えられないのです。
この質問に自信を持って答えられるようになるには、学生のうちにいろいろな種類の仕事を体験する必要があります。いろいろな仕事を実際にやってみれば、自分が楽しいと思うもの、つまらないと思うもの、得意なもの、苦手なものがハッキリするのです。
欧米で、大学生がインターンシップをすることが当たり前で、入社時にインターンシップの経験が物を言うのはこういう理由です。それがあさっての方向にカスタマイズされてしまった日本では、大学生があさっての方向の悩みを抱えてしまいそうで心配です。
これから就活を行うみなさんには、経団連の方針に振り回されず「自分の向いている仕事を探すためにいろいろな仕事をしてみる」というインターンシップの本質を忘れずに、どんなインターンシップをするといいかよく考えていただけたらと思います。(森山たつを)