辞めるやつにボーナス出せん! 成績最高なのに、あんまりです

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   12月、といえばボーナスの時期ですね。日経新聞の調査では、2016年の冬のボーナス支給額は前年比0.009%の増加と、4年連続で増加となったようです。大きな買い物をしようと心に決めている人、堅実に貯金に回そうとしている人、ローンなどの繰り上げ返済を行う予定の人など、ボーナスの使い方は様々です。そんなボーナス、支給条件についてなど、法律ではどのように決まっているのでしょうか。今回は、家業を継ぐために退職することになった男性のエピソードをもとに、ボーナスの法的取扱いについて解説していきましょう。(文責:「フクロウを飼う弁護士」岩沙好幸)

  • だめだ! 辞める人にボーナスは出せない
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事例=退職予定伝えたら、僕だけボーナス支給されません

   このたび、8年間勤めた会社を退職することになりました。とてもやりがいのある仕事でしたが、地元で両親が営んでいる小さな店を継ぐことにしたからです。心を決めるまでには相当な葛藤がありました。でも、僕にとっても大切なお店だし、なんといっても両親に恩返ししたいという気持ちが強く、継ぐと決断しました。会社とも相談し、引き継ぎやいろいろな事情もあって、少し先ですが半年後に退職ということで合意しました。

   それから2か月経った先日、冬のボーナスの支給日だったのですが、なんと僕にだけ支給されなかったのです。上司に確認すると、「上から、辞めるやつに出すボーナスなどないと言われてしまった。すまない」と言うのです。

   僕は、辞めるからといって仕事に手を抜いたつもりはありませんし、むしろ8年もお世話になった会社のために、最後だからと気合を入れて過去最高の営業成績も出しました。それなのにこんな仕打ちって、あんまりじゃないでしょうか。

弁護士回答=ある程度減額はあってもゼロということは......

   残業代などと異なり、ボーナスを支給しなければならないという法律はありません。

   よって、そもそもボーナスを支給するか、どのような条件で支給するかは雇用契約や就業規則などによって決まることになります。そして、雇用契約などで支給のための査定期間、内訳、計算式などの支給基準が定められている場合には、それらに従うことになります。「×か月」で支給などの条件が規定されている場合には、その条件に当てはまる限り、会社側はボーナスを支払う義務を負うことになります。

   すなわち、ボーナス支給基準については、会社側が自由に決めることができるものです。そこで、例えば「支給日に在籍しない労働者には、賞与を支給しない」という規定がある場合には、少なくとも賞与支給時に在籍している以上、会社としてはボーナスを支給しなければなりません。

   では、そのような規定がない場合、一切ボーナスを支給しないことは許されるのでしょうか。

   ボーナスは、それまでの労働の対価、将来に対するインセンティブ、業績による利益の配分、という意味合いがあるといわれています。この相談者の件では、労働の対価という点では、営業成績も良好であり会社の業績に貢献したのであるから、それ相応の対価としてのボーナスの支給を受けられることになるはずだといえます。また、本人以外の全員に支給されており査定期間の点も問題なく、退職予定という点を除けばあえて相談者だけを外す合理性もありません。

   もっとも、退職予定者には将来に対するインセンティブというものがないのだから、この部分については支給される理由がないことになりそうです。しかし、将来に対するインセンティブは、あくまでボーナスの意味合いの中の一つに過ぎないと考えられるので、当然それだけを理由にボーナスを一切支給しないというのは、会社の自由な判断の枠を超えたものとして違法、不当なものになると考えられます。

   つまり、今回のケースでは、一定程度減額される可能性はあるものの、一切ボーナスを出さないというのは許されないことになるでしょう。

有休消化、会社との折衝でトラブルも

   そのほか退職時に起こりやすいトラブルとして、有給休暇消化の問題や、そもそも会社が退職を認めてくれないなどの問題があります。

   有給休暇は労働基準法39条で認められた労働者の権利です。退職前に有給休暇を消化することは法律上問題のない行為となります。ただし、有給休暇日数やその他の内容は、雇用契約や就業規則などで定められるので、退職前によく確認しておく必要があります。というのも、退職時には自分の受け持った仕事の処理や後任者への引き継ぎの問題などが発生するので、この点をきちんと確認しないと思わぬトラブルが起こりかねないからです。

   また、会社側から退職を認めないと言われても、簡単に諦めてはいけないでしょう。労働者が自由な意思で会社を退職することが法律で認められているからです。ただし、退職する意思が誰から見てもはっきりとわかるように、書面やメールを証拠として残しておくべきです。

   場合によっては、例えば退職予定であることを会社に伝えず、ボーナスの支給を受けるということも考えられます。ただ、社員の退職は会社の今後の方針にも影響を与えるので、退職予定であることを会社に早めに伝えるのは会社にとって好ましいことでもあります。

   今回の相談者のケースでは、退職そのものに問題はないようです。さらに、説明した通り、減額の可能性はありますが、事情を考慮すると一切ボーナスが支払われないということにはならないと思われます。ご自身で会社と交渉してみるのもアリですが、難しいと感じたら弁護士などの専門家を頼ってくださいね。

   ポイント2点

●残業代などと異なり、ボーナスを支給しなければならないという法律はない

●ボーナスは、それまでの労働の対価、将来に対するインセンティブ、業績による利益の配分、という意味合いがあるといわれており、退職者予定者には「将来に対するインセンティブ」の部分については支給されない可能性はあるが、一切ボーナスを出さないというのは許されないと考えられる

岩沙好幸(いわさ・よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼っている。「弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ」を更新中。編著に、労働トラブルを解説した『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
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弁護士法人アディーレ法律事務所 篠田恵里香


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