時間を売るのがサラリーマン? 能力・実績は評価が難しいが(江上剛)

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能力で評価されるよう努力してほしい

「おかしいじゃないですか。潜在能力で判定するなら、高校や中学までさかのぼらないといけなくなる。私たちは事業会社です。顕在化した能力で判定すべきでしょう。どれだけ能力を顕在化させ、実績で貢献しているか見なければいけない」

   先輩も黙っていない。

「馬鹿言え。誰が見たって東大法学部のほうが優秀だろう。将来、A君とB君のどっちが役立つと思うのか。B君に決まっているだろう」

   その先輩は東大法学部卒だ。

   銀行に入ってからのテストなどの成績を調べることになったのだが、A君(私立大)のほうがB君(東大)よりも何もかも成績がよかった。

   ざまぁみろ、だね。結局、A君が昇格した。A君は、その後も活躍した。B君はプライドが傷ついたのか、退職してしまったね。

   事程左様に能力評価は難しい。実績評価も難しい。

   成果主義が広まって、実績で評価するといった途端に、あちこちの部署や支店で目標が決まらなくなった。目標を意欲的に積み上げると、達成しなくなるからだ。こうなると達成率が悪化して、成果主義ではマイナス評価になってしまう。

   能力(実績を含む)で評価するのが難しければ、やはり年功序列がいいかな、という会社も増えてきているらしい。年功序列というと、時間を売ることになるのかな。

   あなたへの質問に答えるのはとても難しい。社員の評価体系そのものの問題だからだ。

   でも、少なくともあなたは能力を磨いて、能力で評価されるように努力してほしい。評価制度なんか関係ないという態度が清々しい印象を与えるかもしれない。(江上剛)

江上 剛
江上 剛(えがみ・ごう)
作家。1954年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行築地支店長などを務める。2002年『非情銀行』で作家としてデビュー。03年に銀行を退職。『不当買収』『企業戦士』『小説 金融庁』など経済小説を数多く発表する。ビジネス書も手がけ、近著に『会社という病』(講談社+α新書)がある。
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