上限設けても過労死はなくならない 残業問題の解決に何が必要か

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抜本的に見直すためには

   ここで、たとえば「残業は月に50時間まで!」という例外なしの上限が出来たらどうなるだろうか。"生活残業マン"は「はいそうですか」といって月50時間残業にきっちり抑えることだろう。

   でも、山のような仕事を抱えている(2)の悲劇の人は(もともとチンタラ働いていたわけではないから)残業を削減できる余地はほとんどない。結果、タイムカードを切らない、家に持ち帰るなどの抜け穴を使ったサービス残業が蔓延することになるはずだ。

   確かに、厚労省の作成する統計上は(給与支払いベースゆえに)残業時間は劇的に減少するだろう。政府も「働き方改革、大成功」と胸を張るに違いない。でも、もともと過労死なんてするはずのない生活残業マンの残業を減らしたところで、2番の悲劇の人がサービス残業に走っている状況では、過労死リスクが減ることはないだろう。

   結局のところ、

   (1)残業時間の上限を設けるのと同時に解雇規制も緩和、人を雇いやすくする

   (2)ホワイトカラーについては時給管理を外し、成果に対して報酬を出す仕組みに切り替える

をセットで導入する以外、抜本的に残業文化を見直す道はないというのが筆者の意見だ。(城繁幸)

   ※もっとも、彼らの手にする残業代は従業員みんなの人件費から出ているわけで、従業員みんなでカンパして、遅くまで残っていた人にプレゼントしているようなものなので、従業員全体で見れば損でも得でもない。早く帰った人がお金で損をし、遅くまで残った人が人生を無駄にしているだけのことだ。

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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