供給サイドに女性の視点を
働きながら赤ちゃんを育てている女性編集者がデスクで仕事をしていると、50代の男性たちが話し合う声が漏れ聞こえてきます。
「うちの雑誌は男の読者ばかり。どうしたら女性が読んでくれるのだろうか」
そんなテーマをめぐって、まるで見当外れのことを議論しています。彼女はため息をつきます。
「私に4、5万円手当てを上乗せしてくれれば、街でセンスのいい子たちを探してきて、ディスカッションをさせて、いくらでも有益な意見を引き出してあげるのに」
しゃれたレストランにせよ、かわいい物を売る店にせよ、よく知っているのは女性です。そういう女性たちの視点を供給サイドに組み込まないと成長できない時代が来ています。サービス産業の主たる消費者である女性が活躍しなければ日本の成長も望めません。
女性が活躍するというのは、男性なみの長時間労働をこなすということではありません。A君のように長時間働き続けるパートナーを持つ女性は、自分も長時間働いた上に、A君の「飯、風呂、寝る」のケアをしなければならない。これでは女性は輝けません。
男女ともに働き方を見直し、時短を実現して、男女ともB君のように早く退社してこそ、たくさんの人に会え、たくさんの本が読め、たくさん旅(現場)に行ける。そうやって刺激を受け、翌朝リフレッシュした頭で面白いアイデアを出し合える職場を実現することが何より大切だ、と僕は考えています。(出口治明)