アイデア競う時代に必要なのは 長い労働と男女の分業ではなく(ライフネット生命・出口治明)

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供給サイドに女性の視点を

   働きながら赤ちゃんを育てている女性編集者がデスクで仕事をしていると、50代の男性たちが話し合う声が漏れ聞こえてきます。

「うちの雑誌は男の読者ばかり。どうしたら女性が読んでくれるのだろうか」

   そんなテーマをめぐって、まるで見当外れのことを議論しています。彼女はため息をつきます。

「私に4、5万円手当てを上乗せしてくれれば、街でセンスのいい子たちを探してきて、ディスカッションをさせて、いくらでも有益な意見を引き出してあげるのに」

   しゃれたレストランにせよ、かわいい物を売る店にせよ、よく知っているのは女性です。そういう女性たちの視点を供給サイドに組み込まないと成長できない時代が来ています。サービス産業の主たる消費者である女性が活躍しなければ日本の成長も望めません。

   女性が活躍するというのは、男性なみの長時間労働をこなすということではありません。A君のように長時間働き続けるパートナーを持つ女性は、自分も長時間働いた上に、A君の「飯、風呂、寝る」のケアをしなければならない。これでは女性は輝けません。

   男女ともに働き方を見直し、時短を実現して、男女ともB君のように早く退社してこそ、たくさんの人に会え、たくさんの本が読め、たくさん旅(現場)に行ける。そうやって刺激を受け、翌朝リフレッシュした頭で面白いアイデアを出し合える職場を実現することが何より大切だ、と僕は考えています。(出口治明)

出口治明
出口 治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険株式会社創業者。1948年三重県生まれ。京都大学卒業後、1972年に日本生命保険相互会社入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを歴任。2008年、ライフネット生命保険株式会社を開業。著書に『生命保険とのつき合い方』(岩波新書)、『働く君に伝えたい「お金」の教養--人生を変える5つの特別講義』など。
2018年1月から、立命館アジア太平洋大学学長、学校法人立命館副総長。
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