金の切れ目が縁の切れ目なのか 大散財がヒモ氏の小遣いに響き

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   以前、このコラムでも触れたが、私はヒモを飼っている。男を養うといえば多少、聞こえはいいが、ほぼ無職のアラサー男性に食事をおごり、小遣いをやっている程度のこと。それで自己承認欲求を満たす「寂しい女」ともいえる。そんな寂しい女が、ついに財布まで寂しくなってしまった。「金の切れ目が縁の切れ目」。ヒモ氏との関係はどうなるのか......。

  • カードの請求額が恐ろしい
    カードの請求額が恐ろしい
  • カードの請求額が恐ろしい

小顔プチ整形に30万円使ったら

   先日私は、小顔になる糸を頬に埋め込むプチ整形を受け、30万円をポンっと使ってしまった。結果にはかなり満足しているが、恐ろしいのは「カード請求」である。来月あたりの請求額は、軽く40万円を超えるだろう。不安になり、カード会社の個人ページを開く。

   私は楽天カードを使っているが、ときどき美容整形によって大規模な出費を行うので、「ダイヤモンド会員」という名誉なのか不名誉なのか分からない称号を手に入れている。個人ページには「あなた様はダイヤモンド会員です」というゴシック体が光り、高級ホテルの割引などが受けられますよ、ぜひどうぞ、と、きらびやかな夜景が表示される。

   そんなことに浮かれている場合ではない。私は今、先日の散財を確認し、反省するためにここへ来たのだ。確認すると、やはり来月は40万円超え。心にはヒューっと寒い風が吹き抜け、ヒモさんの存在がちらつく。

   30万円も使ってプチ整形したことを、ヒモさんはかなり怒っていた。金額の大きさというより、その場で頬に糸を埋め込むという(傍から見れば)大掛かりな美容整形をして、あっけらかんとしていることに、男としてドン引きしたらしい。そんなヒモさんへの罪滅ぼしか、私は彼への小遣いを1000円、2000円とアップさせていった。ときには1日に1万円以上をポンと渡してしまう日もあり、自分でも「やりすぎかな」と思っていたのだが、カードの請求額を見て我に返った。これでは貯金がどんどん減って、ヒモを養うどころではない。

「1日5000円もらえるのが当然」と

   私が小遣いをどんどんアップさせるので、ヒモさんも「1日5000円はもらえるのが当たり前」と思うようになっていたらしい。「火の車」となった私が、「今日は3000円でいい?ごめんね」と言うと、少しさみしそうな顔をした。「明日の交通費がないよ......」

   甘やかしたのは私なのに、モヤモヤとした怒りがわいてくる。「わたしゃ今、そんなにお金がないんじゃ! 少ない原稿料で何とかやってる上に、この前は某テレビ番組に出演する話もなくなったし、美容整形で30万も使っちゃったし、もう火の車だよ!」と、金のない自分のふがいなさを、ヒモに責任転嫁するという最悪の事態になってしまった。

   ヒモ氏はハッとした顔になり、「北条さんは火の車なんだ......つい甘えてたよ、ごめんなさい」。それ以来、彼は少しずつではあるが日雇いバイトをするようになり、マクドナルドで毎回、2つねだっていたチーズバーガーを1つに減らし、「小遣いも1日2000円で十分だよ、ありがとう」と言ってくれるようになった。心なしか、感謝の言葉も増えた気がする。

   ヒモ氏よ、情けない「火の車女」ですまん。ただ、フトコロ事情を正直にぶちまけたおかげで、少ない小遣いで満足してくれるようになったのは「嬉しい誤算」だった。教訓「ヒモを甘やかしすぎてはいけない」。もちろん、美容整形で散財したことは(少し)反省し、自分の財布の紐もしっかり締めなくてはいけないと思う、今日このごろである。(北条かや)

北条かや
北条かや(ほうじょう・かや)
1986年、金沢生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。近著『インターネットで死ぬということ』ほか、『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』などがある。
【Twitter】@kaya_hojo
【ブログ】コスプレで女やってますけど
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