「あなたはあなた、KYでいい」
ことに第3章「同僚・先輩と渡りあうとき」が読後、胸に残る。
「対抗心を燃やされたら?」で江上さんは、前述した銀行存亡の危機を乗り切ったとき、周りから「焼け太り」と指さされた衝撃を打ち明け、孔子の「歳(とし)寒うして然る後松柏(しょうはく)の彫(しぼ)むに後るるを知る」を紹介する。これは「寒い季節になり、他の木々が葉を散らしてしまった後になって、初めて松柏が緑のままであることを知るという意味だ」という。
松柏の緑を、江上さんは周囲に同調せず銀行を去った自らの孤独に重ね合わせる。
「世間というのは、何かとあなたの行動に目を光らせ、少し変わったことをすれば対抗心を燃やす。しかし、あなたはあなた、だ。KYでいい。必死で荒野に根を生やすことに努力したらいい。あなたが松柏のように変わらぬ緑の葉でいるのを見て、やがて彼らは何も言わなくなるだろうから」
なんと体を張ったエールであることか。(YM)