『ラブホの上野さん』が深い 就活に引きつけ読むこともでき

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演出を加えて価値を上げること

   たとえば、2016年11月28日現在無料サイトで読める最新話「金は天下の回りもの」。ネタバレで申し訳ないですが、宝くじで1万円当たった男性が上野さんの指南を受けます。賞金をはたいてガールフレンドに1万円の手袋をプレゼントしようと考える男性に、上野さんは待ったをかけます。

「一万円の予算でプレゼントをするときは『一万円のものを買ってはいけない』ということでございます」

   なぜなのか。上野さんは、「プレゼント」というからには、包装にも凝るべきだし、渡す場所などの演出も大事、と説きます。

「演出を加えて価値を上げることを世間一般で何というか知らないんですか?   商売ですよ」

   名言です。このことに早く気づいていれば、私も、あのとき......(遠い目)。えーと、何の話でしたっけ?   ああ、就活に役立つかどうか。

   この作品は、恋愛指南であると同時に、コミュニケーション論としても読めます。ともすれば一方的になりがちな感情がそうならないようにするためにはどうすればいいか。これって、就活にもかなり通じる話です。最新話で上野さんは、こんなことも言っています。

「デートやプレゼントに関して男はお金と物の交換だと思っているが、女性はお金と感情の交換だと思っている。なのでプレゼントは物・演出ともに手を抜かないように、という話なのです」

   就活でいえば、元(大学名、体育会系、資格その他)がよければすべてうまく行くと勘違いする学生が結構います。その逆も多くいます。

   しかし、いくら元がよくても、面接などできちんと話せなければ就活は失敗してしまいます。ほかにも、女性に対するアピール法を説く一話など、そのまま自己PRの方法論にもつながります。

   自分の恋愛スキル・就活ノウハウによほど自信があるなら話は別。でも、そうでもないという方には、一読をお勧めします。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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