「私こそ人脈豊富」とは勘違い 発想育むのは「弱いつながり」

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なぜ超有名企業が生まれるのか

   人と人とのつながりには、「強いつながり」と「弱いつながり」があります。「強いつながり」とは、同じ組織内の人間同士、同業者間、取引先間の人間関係です。価値観が近く信頼と安心感を充足しますが、一方で知識や感性の同質化をもたらします。

   対する「弱いつながり」は、異業種、異環境で生活する者同士の人間関係です。ここでは信頼関係に基づく安心感や満足感は得られない代わりに、日常的に接する仲間たちと違う視点を知ることで、新たな機会や価値が提供される可能性を秘めているといえるでしょう。

   アメリカの社会学者グラノベッターは1970年代に、「弱い紐帯の強さ」(Strength of weak ties)という考え方を提唱しました。

「あなたと近くなく、関係も深くはない知人は、あなたと異なる環境の中で異なる価値観を持ち、異なるコネを持っていやすい。もし腹を割って話してみたら実はあなたと意見があわない人かもしれないが、そこまで深入りせずに連絡が保たれていれば、あなたとは違う視点から新鮮な情報を運んでくれる」

   グラノベッターはこの理論に基づいて、シリコンバレーからなぜアップルやグーグル、フェイスブックといった企業が次々に生まれ、斬新なサービスを創出しているのかについて、「弱い紐帯の強さ」のなせる業であると分析しています。すなわち「弱いつながり」こそが、斬新な発想の源になりうるというのです。

   H社長が自認する「豊富な人脈」は、結局のところ「強いつながり」の人間関係に限定されています。社長が社員たちに求めている「発想に乏しい」状況の改善には、社長自身に欠けている「弱いつながり」を、まず誰より社長自身が増やすべきではないか。私はそう考え交流会へお誘いしてみたのです。

   結局H社長には「商売に関係のある企業の社長も出席するのでビジネスチャンスがあるかもしれませんよ」と俗なメリットをにおわせ、ようやく交流会に顔を出す了解を得ました。当日は私がホスト役を務めていろいろな業種の方々をご紹介しようと思っています。

   「弱いつながり」の奥行きを少しでも感じてもらえたら、シリコンバレーの企業とまではいかずとも、いずれ会社風土が変わり、社員の皆さんの活性化にもつながるのではないかとちょっと楽しみに思っています。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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