プノンペンに「日本の病院」 いずれは現地の人にメリットが

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成果が出るには時間がかかるが

   そのような、高度な手術ができる病院としてできたサンライズジャパンホスピタル。開院式典は、カンボジアのフンセン首相、安倍首相の代理として日本の外務省政務官などが参加し、盛大に行われました。

   そのスピーチの中で、フンセン首相自ら「自分は海外で医療行為を受けていたが、今いちばん行きたいのはこの病院だ」と漏らしてしまうくらい、これまでの医療レベルは低く、この新しい病院に大きな期待が込められているのです。

   では、この病院が開院したことで、一般的なカンボジア人の生活は大きく変わるのでしょうか? 私の予想では、しばらくは何も変わらないと思います。

   プノンペン市内の日本人医師のいる病院は、一回の診療に数百ドル(数万円)かかります。海外旅行保険に入っている日本人であれば本人負担無料で診療してもらえるのですが、月給200ドル(2万円)のカンボジア人にはとうてい手の届く額ではありません。国民医療保険も充分ではありません。

   したがって、たとえカンボジアの一般の人が脳外科手術の必要のある状態になっても、このような立派な病院には来れず、町医者にかかることになってしまうのです。

   とはいえ、この病院が無意味かといえばそんなことはありません。この病院では日本人医療関係者が約20人勤務するとともに、開院にあたり約100人のカンボジア人医療関係者が日本に行き研修を受けています。

   日本での研修や、この病院内でのスキルトランスファーにより、多くのカンボジア人医師の医療スキルが上がり、やがて彼らがカンボジア各地の病院に赴任するようになれば、辺境の村で起こったような悲劇はなくなっていくことでしょう。

   その成果が出るまでには長い時間がかかりますが、その第一歩として、日本が大きな役割を果たそうとしているのは、紛れもない事実なのです。(森山たつを)

森山たつを
海外就職研究家。米系IT企業に7年、日系大手製造業に2年勤務後、ビジネスクラスで1年間世界一周の旅に出る。帰国して日系IT企業で2年勤務後、アジア7か国で就職活動をした経験から「アジア海外就職」を多くの人と伝えている。著書に「アジア転職読本」(翔泳社)「はじめてのアジア海外就職」(さんこう社)がある。また、電子書籍「ビジネスクラスのバックパッカー もりぞお世界一周紀行」を連続刊行中。ツイッター @mota2008Google+、ブログ「もりぞお海外研究所
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