「カネのためだ」告白に唖然 理念なき起業に失うもの大きく

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   4年前、40代半ばで脱サラし独立起業したH氏。立ち上げた事業が思ったように展開せず、共働きの奥さんの稼ぎに支えられる状態から抜け出せずに苦労しているとのこと。私とは家族ぐるみの付き合いがある仲なので、夫婦揃って相談にやって来ました。

立ち上げ資金は2年で底つき

夫にはもうついて行けない
夫にはもうついて行けない

   H氏の起業構想は、自身のブランドを立ち上げ、スポーツ好きの20~40代女性をターゲットに、独自のアイデア・ファッショングッズをネットと委託方式で販売する、というビジネスモデル。サラリーマン時代の退職金に加え、所有マンションを売却し立ち上げ資金を作ったものの約2年で底をつき、その後の生活は会社勤務の奥さんの収入を頼りにし、自身はアルバイトで生活資金の補填と新たなビジネス原資を作り出すという日々を送っているということでした。

   ファッションブランドはそんなにたやすく確立できるものではありませんが、彼は長年業界で仕事をしていましたし、デザイナーではなかったものの企画やデザイン素案のセンスの良さで実績を積み上げ、取引先企業や専門家からも一目置かれる存在だったといいます。「Hさんなら独立しても十分やっていける」という周囲の評価に後押しされ、起業したのが4年前ということでした。

「マーケティング理論も最新のネットビジネス・ノウハウも勉強しています。人脈を使って様々な販売ルート開拓や広報活動もしています。商品だって、モニター調査ではものすごく評判がいいんですよ。まだブレイクしていませんが、時間がかかるのはこの業界の常ですから、あとは時間の問題だと思っています」

   H氏本人は至って楽観的なのですが、奥さんは心中穏やかでないようで、今回の相談も彼女がH氏の腕を引っ張って私のところに連れてきたようでした。

「本人がやりたいことをやるのは別にいいんじゃないかと思って、起業には反対しませんでした。立ち上がりの1、2年ぐらいは私もがんばって支えていこうと思っていました。でも、もう4年。今は生活のために私も本業以外にバイトをしていますけど、年齢的に目いっぱい働くのは限界です。ハッキリ言って、もういい加減にしてほしいのです。大関さんから厳しくご指導いただいきたいと思って、今日はうかがいました」

   なんとも険しい状況なのでした。

   見通しの甘い起業というものはよくある話ではあるのです。ただ、独身者ならなんとでもなるものの、家庭持ちのサラリーマンが安定収入を失って家庭不和が生じるというのは、一番厄介なパターンです。起業そのものの見通しに誤りがなかったのか、まずは起業時の状況を聞きつつ検証してみるのがよさそうでした。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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