過労死がいつまでもなくならないわけ 電通の事件を考える

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改革のゴールとは真逆のもの

   まとめると、今回の捜査は、企業には長時間残業を可能とする環境整備を、労働者にはより長時間の残業を促してしまうリスクが非常に高いということだ。それは長時間残業の抑制という働き方改革のゴールとは真逆のものに筆者には思える。

   気になるのは、どうも今回の強制捜査の裏には、官邸の強い意向が働いている様子がうかがえることだ。

   電通という、高いネームバリューがありつつもたいして従業員の多くない企業は、点数稼ぎの相手としては非常に楽なターゲットだ。恐らくは、手間のかかる労働市場改革よりも、手っ取り早く得点の稼げる方法を選択したのではないか。

   「あの電通を強制捜査して幹部の刑事告訴に持ち込んだ」となれば、現政権に対して喝采を送る人が左右問わず一定数は存在するに違いない。

   もっとも、仮にそうだとしても、政府の進める一連の雇用改革に対する反対材料として本件に大々的に便乗している野党の側もとても褒められたものではない。

   本題を避けつつ、空疎なやり取りに終始する政治の姿に、いつまでたってもこの国から過労死を無くせない理由の一端を見たように思うのは筆者だけだろうか。(城繁幸)

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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