今回のテーマは「テレビドラマ・漫画と就活」です。就活そのものをテーマとした漫画やテレビドラマはそれほど多くありません。が、「働く」という視点で学生の参考になるドラマや漫画ならありそうです。そういう作品を見るとき、どんな点に注意すればいいのか、考えてみたいと思います。
「相棒」を上映する大学図書館
雑誌『薬学図書館』2015年60号2巻には、「大学図書館ができるキャリア支援」という記事が掲載されています。筆者は城西大学図書館の職員。同図書館では、就職課職員による図書選びや、就活コーナーの独立、日経テレコン21のデータベース講習会などを展開しているといいます。
その中で、面白いと思ったのは、ドラマ「相棒」の上映会です。就活の参考になるという判断なのでしょう。私が知るかぎり、そのシーズン12の第5話「エントリーシート」は就活をテーマにした数少ないテレビドラマで、自己分析なども描かれており、いろいろ考えさせられる名作です。当コラムでも以前、紹介しました。
2016年のドラマでいえば、「重版出来」(出版業界)、「家売るオンナ」(不動産業界)など、ドラマの舞台として取り上げられることの少ない職業・業界をテーマにしたドラマが話題になりました。ちょっと古いところでは、銀行を舞台とした「半沢直樹」も名作でした。
こうしたドラマは、その業界関係者を取材したうえで(あるいは取材に基づいた漫画や小説が原作)、物語が描かれています。なので、対象の業界や職業についての理解を深めるうえでは参考になります。
ただし、注意しなければならないのは、テレビドラマであるがゆえにショーアップされすぎている点です。現在、放送されている「校閲ガール」にも、校閲者が作家を訪問することなどめったにない、などといった現実離れ批判があります。「半沢直樹」にしても、決めぜりふの「倍返し」をできる銀行マンがどこまでいるか、などと話題となりました。
ショーアップないわけではないが
漫画のほうでは、エッセイ漫画というジャンルでお仕事ものが増えています。人気の食品業界を題材にした『チロルチョコで働いています』『ひみつのローソンスイーツ開発室』などがあります。
こちらはテレビドラマほど極端にショーアップされているわけではありません。両作品とも、それぞれ対象企業が取材に協力しています。ただ、地味な作業の部分などはばっさり切られていますし、新人がそう簡単に商品開発に関われるか、という疑問もあります。名前は出しませんが、取材が甘く現実離れしている作品もあります。
では、お仕事もののドラマや漫画が全く参考にならないか、と言えばそんなことはありません。ショーアップされている点を割り引いても、学生からは見えない社会人事情がうまくまとめられています。
ドラマを見る、あるいは漫画を読んだうえで、現実は本当にそうなっているのか、実際の社会人に話を聞いてみるのがいいのではないでしょうか。(石渡嶺司)