先日、本コラムで「グルメ嫌い」について書いたところ、ある女性から「すっごく、よく分かります!」と、嬉しい共感のメッセージをもらった。私はコラムで、「グルメぶる人や、グルメな人が苦手だ」と書き、「資産もなく、将来不安から貯蓄にはげむ一般庶民が、食べる物にむやみやたらとお金をかけるのが理解できない」と大きなことを述べた。よく考えれば失礼千万、ちょっとひねくれた上から目線の自己主張に、まさか共感してくれる人がいようとは。しかもその女性、とってもモテる美人なのである。
「本当に好きな人とは......」
彼女(A子さんとしよう)は30代前半。誰もがあこがれる職業に就いており、私の周りにはA子さんの個人的なファンも多い。ふんわりした雰囲気の可愛らしい女性で、容姿も声も美しい。同性からも異性からもモテる、非の打ち所のないタイプだ。そんな彼女であるならば、ステイタスの高い男性からの「グルメなお誘い」もあるのでは?
「デートで素敵なお店に連れて行ってもらったり、高くて良いものをいただいたりっていうことはありますけれど、やっぱり、本当に好きな人とは、牛丼屋さんやファストフード店にも一緒に行ける関係がいいですよ」(A子さん)
そうそう、そうなんである。背伸びした場所、背伸びした消費、背伸びした関係。20代のころはすべてがキラキラして見えたものが、30代は違う。私たちはもう「落ち着きたい」のだ。もちろん、私とA子さんでは、見てきた「キラキラ」のレベルが全く違うけれども......。
日常の姿で接しラクな相手と
A子さんは続ける。
「飾らないところを見せ合える関係って、いいですよね」
美人で非の打ち所のない彼女のもとにはきっと、飾り立てたデートのお誘いがたくさん舞い込んでくるのだろう。だからこそ、本当に心を許せる相手とは、飾らない牛丼屋、飾らないファミレス、飾らない安居酒屋に行きたくなるのかもしれない。
私にも、ちょっと分かる気がする。女も30代になれば、異性の背伸びした姿よりも「そういうところ」が見たくなる。好きな相手に求めるものが、「非日常」から「日常」に変わるのかもしれない。日常の姿で接して、ラクな相手と一緒にいたい。もっといえば、一緒にいてラク、かつ楽しませてくれる相手がいい......ってことかもしれない。贅沢だろうか、うん、おおいに贅沢なんだろうな。(北条かや)