なぜ「クリントン・リスク」はないのか(明治)
「トランプ・リスク」がドル/円相場に多大な影響を与えた一週間であった。日本時間11月1日夜に、米大統領選挙支持率の世論調査においてトランプ候補がクリントン候補を上回ったと一部メディアで報じられたからだ。1ドル=105円台にあった相場は急落し、一時は102.5円をつけるなど大荒れの展開となった。
なぜ「トランプ・リスク」という言葉はあるのに、「クリントン・リスク」という言葉はないのだろうか。実は、クリントン候補が打ち出している政策には、トランプ候補と同様ドル安要因となり得る面がある。それはクリントン候補がウォール街の金融機関やFED(連邦準備制度)への規制を強化しようとしていることである。また、TPPなど自由貿易制度に対して慎重または反対なのはトランプ候補と同じである。
しかし、マーケットは、トランプ候補が優勢になるとドル安方向に動く一方、クリントン候補優勢だとドル高方向に動く。その理由はトランプ候補の主張は過激であり、かつ問題点も多いため、予測不可能・制御不能という「不確実性」が高いからである。マーケットからは「不確実性」は敬遠されやすい。だから、トランプ候補優勢が相場をドル安方向に動かすのである。
また、私には支持率の世論調査がそこまで大きな意味を持つのかの疑問もある。米大統領選挙は、
(1)全米各州での党員集会と予備選挙
(2)二大政党である民主、共和両党の全国大会
(3)「大統領選挙人」を選ぶための一般投票
(4)選ばれた「大統領選挙人」による選挙人投票
という手続きを経なくてはならない(朝日新聞DIGITALによる)。
アメリカの11月8日(火)に行われる選挙とは(3)の「大統領選挙人」を選ぶための一般投票であり、このような大統領選システムでは、世論調査といった国民の人気投票よりも選挙人獲得予想のほうが遥かに重要で、これにおいてはクリントン候補の方が圧倒的であると予想されている。よって、私は「トランプ・リスク」は杞憂に終わる可能性が高いのではないかと考えている。
取引結果を見ていくと、前述の内容とは矛盾していることになるが、すべての取引においてショート(売り)を行った。なぜ、そうしたかというと市場の反応は、その常として下げ要因に対して強烈に反応する傾向があるからだ。実際、ドル円が反発してところをショートで逆張りをした取引は成功した。失敗点はモメンタム的に深追いしすぎて反発したところに、逆指値でおいておいた損切り用注文にかかってしまったことだ。
また、金曜日には米雇用統計の発表があったが、マーケットテーマは米大統領選であるので、重視すべき指標ではないと考えて無視した。実際、非農業部門雇用者数は+16.1万人増と良い数値を出したが、市場の反応は限定的であった。
いよいよ米大統領選。前述のとおり、クリントン候補勝利を予想するが、英国がEUを離脱した時のように、全くの予想外の結果になってしまうこともあるので、注意深く相場を見ていきたい。(明治NS)
取引履歴
(1)10/31 23:28 105.080 ショート
(2)11/01 08:14 104.854 決済 損益+22.570円
(3)11/02 21:23 103.224 ショート
(4)11/03 13:12 104.780 決済 損益+104.780円
(5)11/03 16:36 102.645 ショート
(6)11/03 19:07 103.000 決済 損益-106.680円
(7)11/04 00:01 103.017 ショート
(8)11/04 10:55 103.016 決済 損益+0.180円
(9)11/04 15:14 103.192 ショート
(10)11/04 19:09 102.920 決済 損益+81.600円
先週からの損益 +102.45円
現在 1496.65円