「義務保育にすればいい」
保育所不足も、若い人から聞かされることの多い問題です。僕の考え方は簡単で、
「義務保育にすればいい」(もちろん、自分で育てたい人は、その限りではありません)
先生が足りないから小学校に入れない、という事態は絶対に起きません。日本が義務教育制度をとっているからです。ならば、保育所も同じように、希望者は全員入所できるようにすればいいではないですか。
フランスでは、シラク大統領が「子どもを持っても新たな経済的負担が生じないようにする」「無料の保育所を完備する」「育児休暇から復職する際は、その間ずっと勤務していたものとみなす」というシラク3原則を政策として打ち出し、90年代半ばからわずか10年あまりで出生率を1.66から2.0台にまで引き上げることに成功しました。日本の待機児童問題も、フランスから見れば「政府の腹が据わっていないだけ」と見えるに違いありません。
市民に不足しているものを供給する、それが政府の基本的な役割です。民間がやれないなら政府がやる。かつて住宅が足らないときは、国が住宅公団を創って、積極的に住宅を建設しました。民間で間に合うようになったら、政府は徐々に手を引けばいい。待機児童問題は、とにかくニーズに対するレスポンスが遅いと言わざるを得ません。
その住宅にしても、日本は現在約800万戸の空き家を抱えています。その一方で毎年100万戸に近い住宅を造っています。中古住宅の取得を税制で優遇し、逆に新設住宅については税制優遇を止めれば、空き家も8年程度でゼロになるという試算があります。これもまた、政府の腹が据わっているかどうかの問題なのではないでしょうか。(出口治明)