底にある「期待の継続」
監督のコミュニケーションの底にあるのは、「ピグマリオン効果」と呼ばれるものに他なりません。ピグマリオン効果は、心理学者のローゼンソールによって証明されたもので、人がある特定の人にずっと期待を寄せているとその人は期待に沿うようになる、というものです。継続は力。期待を実らせるためは期待を継続する以外にないのです。教員免許を持つ球界の変わり種は、それを知っていたのかもしれません。
ある管理者研修機関は、「部下と毎週まとまって話す時間を設けている上司とそうでない上司との間には組織活性度に大きな差はないが、部下が『自分のために時間を取ってくれている』と感じる上司とそうでない上司の間には組織活性度に大きな差が生じる」という調査報告を公表しています。
上司と部下のコミュニケーションは、確かに量の確保も大切なのですが、「上司が自分のために時間を取ってくれている」と部下が感じているかどうかがカギなのです。そこが理解されていなければ、上下コミュ二ケーションを組織の活性化につなげることができません。
ちなみに同調査にある、部下が「自分のために時間を取ってくれた」と実感するリーダー行動とは、
「部下と定期的に話している」
「部下に期待する役割を伝えている」
「部下の成功や成長を支援している」
「部下の価値観を理解している」
「部下をやる気にさせる提案や要望をしている」
「話しやすい・相談しやすい雰囲気である」
だそうです。
栗山監督にこうした行動がほぼ全部備わっていると実感させられるにつけ、ネットなどで今盛んに紹介されている栗山流コミュニケーション術を、経営者にもぜひ手本として参考にしていただきたいと思うところです。(大関暁夫)