私は今、東京に滞在して「就活」について調査をしています。就活の闇についてリアルなドキュメントを作りたいわけではなく、学生と企業をつなぐ道のこじれを解消するような何かを探している段階です。
「装備」コマンドを打っていない
この2週間も多くの大学生、大学関係者、企業人事の方々にお話をうかがっています。そんななかで、ひとつ分かったことがあります。就活時の「学生が自分を見せたい姿」と「企業が学生に見せてほしい姿」にずれがあるということです。
このずれを「装備」という概念を元に解説してみます。
「ぶきや ぼうぐは かならず そうびしてください! もっているだけじゃダメですよ!」
これは、ゲーム「ドラゴンクエスト2」の最初で、お城の兵士が言っている言葉です。主人公は銅の剣という武器を王様からもらうのですが、持っているだけではなんの役にも立ちません。「装備→銅の剣」というコマンドを打ち、手に取ることで、銅の剣で敵をぶったたくことができるようになるのです。
多くの大学生の人たちも、この「装備」というコマンドを打っていない状態です。
彼らは生まれてから二十数年、国語数学理科社会から、美術や体育、人間関係から社会常識までたくさんのことを学んできました。道具袋の中には、そんなアイテムがいっぱいです。しかし、道具袋の中に入れたままでは、村の外に出て敵が襲いかかってきたとき、役に立ちません。
例えば、英語。たくさんの単語を覚え、発音の練習をし、文法を学んで文章も書けるようになりました。しかし、その状態だと、まだ外国人に面と向かったとき会話ができません。また、企業の人が「この人は外国人と仕事をすることができるか?」と思ったときに判断することができません。
そこで必要なのが「装備」です。装備のひとつの方法が「資格」。例えば、今まで手に入れた英語の知識を使ってTOEIC700点を取ると、外部の人から見て「あの人はそれなりに英語が読める」と判断してもらえるようになります。
ただ、この装備が完璧ではないことも知られています。TOEICの点数が高くても外国人を目の前にして全然しゃべれない人を企業の人はたくさん知っているからです。
そこで、もっと効果のある装備の方法が「実践」です。英語の知識を総動員して、「カンボジアのカレー屋で、新しいカンボジア人従業員の募集広告を英語で出し、英文履歴書を読み、英語で面接を行い、採用した」という実績をつくればどうでしょう?外部の人から見たら「かなりの高確率で、英語の読み書きを使った外国人との仕事できる人」と評価されるはずです。
試しに「冒険」してみること
学生時代というのは「与えられる」期間です。学校に通っていれば、いろいろな人がアイテムをくれます。そして、道具袋の中身を充実させていくのが学生の仕事です。
社会人になるとこれが「冒険をする」期間になります。今まで集めたアイテムを使って、自分でやることを見つけ、お金を稼いだり、誰かを守ったり、アイテムを手に入れたり、新しい場所に旅したりするのが、社会人の仕事です。
大学4年間というのは、この「与えられる」期間と「冒険をする」期間の中間。学生時代に手に入れたアイテムを「装備」し、冒険をできるよとお披露目するのが就職活動なのです。
従って、勉強をしてより多くのアイテムを手に入れると同時に、そのアイテムを装備して、試しに冒険をしてみることが大切です。冒険は、アルバイトでもいいですし、文化祭の実行委員でもいいですし、海外インターンシップでもいいです。
このような冒険をした人は、就活の時に、
「私はこのような道具を持っています。そしてその道具を装備して○○を成し遂げたことからもお分かりいただけるように、きちんと使いこなすこともできます」
とハッキリ話をすることができるのです。
就活で苦戦しがちな人は、そもそもアイテムをあまり持っていない人と、そのアイテムの装備の仕方が分からない人。装備をしていないと、外から見たときあなたがアイテムを持っているかどうかもわからないんです。
不用意にありのままの姿を見せるとか、マニュアル本を使って持ってもいない道具を装備しているように見せるとかしてしまうと、面接をする側はその学生がどんな人か分からなくなり、分からないから採用しない、という結果になってしまいます。
大学生のみなさんは、まず自分がどんなアイテムを持っているかを調べてみてください。アイテムが足りなそうだったら取りにいきましょう。ある程度そろっているようだったら、そのアイテムを使って小さな冒険にでて「装備」をしていきましょう。
このことに早く気づけると「就活」という通過儀礼をスムーズに通過し、よい冒険の第一歩を踏み出せるようになります。(森山たつを)
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