「周りの社員が残業していても、自分の仕事が終わればサッサと帰ってよいか」という問題はしばしば議論になるテーマの一つだ。「先輩や上司を差しおいて先に帰るべきではない」が大勢の時代もあったろうが、時を経て「ダラダラ残業するほうがよくない」「仕事が終わっているのに帰れないのはブラック」といった主張が勢いを得ているように見える。
結論は住職108人にゆだねられ
そんなご時世にあって、話題になっているのが「コレって私、悪くないよね?」(テレビ東京)というバラエティ番組の2016年10月17日放送分で繰り広げられた評定だ。
28歳男性からの訴えは、「自分の仕事は終わっているのに定時で帰っちゃダメなのか?」という、お馴染みのテーマ。定時を少し回った時計を見て「お先に失礼します!」と席を立つと、上司から「何だ、もう帰るのか?」と待ったをかけられた。「仕事が終わったので」と振り切ろうとすると、「お前は周りが見えないのか? まだみんな仕事してるだろ!」と、一人先に帰るのを正面切って咎められた、という。
またも蒸し返された問いに、スタジオでは、平成ノブシコブシの吉村崇さんだけが「悪い」と敢然。江川達也さん、光浦靖子さん、スザンヌさん、菊地亜美さんは「悪くない」と今どきの常識を代弁した格好。
そのまま「悪くない」という裁定に落ち着くかと思いきや、結論は、番組がアンケート調査をお願いした住職108人にゆだねられることになり、雲行きが怪しくなる。
仏の道を説くお坊さまたちは口々に、
「ほとんどの仕事はチームでやっている。みんなといることはチームワークの結束にもなるので、無理に定時で帰る必要はない」
「定時になったからハイさようなら、というのは、オヤジ世代からすると悪い。自利利他円満といって、他人に利益を与えようとすると自分に利益が帰ってくるもの。職種によって違うとは思うが、もうちょっと頭を使え!」
などと一人定時帰りの非をあげつらい、「悪い」と断じた住職が75人にのぼった。そのため番組的には「定時で帰るのは悪」という結論になってしまった。
このなりゆきに、光浦さんは「納得できん! 和尚と話がしたい」と語気を荒げ、最初から「悪い」の立場にいた吉村さんは、「仏に背くのはやめましょうよ」と余裕の笑みを浮かべていた。
定時のない人に言われても
「こんな結論を導き出されたんじゃたまらない!」と怒ったのは視聴者たちだ。ツイッターでは、放送中から、
「住職『周りが残業してたら定時に帰らず自分も残業するべき』こういう考えをする坊さんが7割もいるのかよ。なんか見る目変わったな」
「100人の住職のうち、定時で帰れる状況でも周りに合わせて残業しろ!って考えてる人が8割弱とかこの国終わってるだろ」
「やっぱり会社勤めやめてフリーになって正解だった。会社にいたら地獄行きだわ」
と、住職たちへの異議が噴出。放送終了後も、番組内容をまとめたネット記事などに対し、
「定時も何もない住職に言われたって困るんだけど」
「自利利他円満とか理想論過ぎる。真っ当な企業なら意味あるだろうけど、搾取型だったら利他だけで終わるよ」
「定時退社が仏の道に背くなら、仏教を信仰するのをやめるしかないな」
といった反響が鳴りやまず、光浦さん同様「納得できん」とほぞを噛む人が多数にのぼる模様だ。(MM)