「親子上場」のJ‐TEC内包化も?
一方、ここ数年の富士フイルムHD株の推移をみると、2012年12月3日の始値1514円を起点にした場合、2014年11月17日にこの時の高値4099円50銭を付けている。その後、翌15年8月17日に5293円の年初来高値を付けた。この時は7月末発表の15年4~6月期の好決算と、1000億円と積極的な自社株買いが買いを誘ったようだ。
ところが、2016年7月28日には3647円と年初来安値をつけた。米国への複合機(コピー機、プリンター、スキャナなどの機能が一台にまとめられた機器)の供給が減っていることで16年4~6月の営業利益が24%減ったため、と報じられていた。
とはいえ、16年10月1日付の日本経済新聞には、J‐TECが 2017年3月期に初の営業黒字が見込まれ、さらには富士フイルムHDが15年に買収したiPS細胞供給の世界的な大手で米ベンチャーのセルラー・ダイナミクス・インターナショナル(CDI)の収益も改善する見通しで、「19年3月期には再生医療事業全体で黒字に転換しそうだ」とあった。
富士フイルムHDの再生医療分野を含むヘルスケア関連事業の2017年3月期連結売上高は、4400億円の見通し。売上高の構成比は現在、複合機関連が47%、ヘルスケア関連は17%だが、再生医療を主力の複合機などに次ぐ新たな成長分野と位置づけたのは好感できる。
J‐TECの事業が軌道に乗れば、現在「親子上場」している同社を、さらに内包化する可能性もあるかもしれない。
富士フイルムHD株は、当面の高値の目安として5075円(16年1月4日に付けた年初来高値)が見えてきた。世界情勢の混乱により大きく下押しすることがあれば、3600円を割ったあたり(前回の買値3585円)が、買いどきではないかと考えている。(石井治彦)