職場に来ているが万全ではない 個別ストレス症状にもケアが大切

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会社と個人で両輪の対策が必要

   わが国のメンタルヘルスケアは、これまで欠勤や診断書の出された人のケア(事後対処方式)が中心でした。しかしストレスチェックが義務化されたこともあり、「未然防止(事前対処)」が求められ、「プレゼンティーズム対策」が不可欠になってきました。

   そのためには、「会社としてなすべきこと」と「個人がなすべきこと」の、両輪の対策が必要です。

   会社として重要なことは、個人の力ではコントロールできないストレッサー(stresser=ストレスをもたらす刺激)を、企業の安全配慮義務としてはっきりと認識し、環境改善や制度・ルールの設定で対処することです。さらに、会社の配慮だけでは十分でなく、コーピング(ストレス対処法)などについては、個人が努力すべき部分もあります。

   プレゼンティーズム対策は、以下のことに注意しながら、社会全体で推進していく必要があると思われます。

(1)ワーク・ライフ・バランス=最近では水曜日を「ノー残業デー」とするなど、残業対策を行う企業が増えています。国民全体が「仕事と生活の調和」を実現できるように、企業の環境や制度を整えることが求められています。
(2)ワーク・エンゲイジメント=これは「仕事への肯定的感情」、すなわちやりがいや充実感などを持って仕事に取り組む、企業従業員の心の健康度を示す概念です。心の健康が実現するようにメンタルヘルスケアを導入することが求められています。ストレスチェック後のラインケア研修などを通じて職場への導入されます。
(3)セルフケア=ストレスは個人差がありますので、一人ひとりに個別のストレスコーピングが必要になります。企業によっては「セルフケア研修」を導入して従業員支援を実施しています。

   仕事からもたらされるストレスにも個人差があります。同じ職場でも、全員がプレゼンティーズムにあるとは限りません。きめ細かい対応が求められるゆえんです。(佐藤隆)

佐藤隆(さとう・たかし)
現在、「総合心理教育研究所」主宰。グロービス経営大学院教授。カナダストレス研究所研究員。臨床心理学や精神保健学などを専攻。これまでに、東海大学短期大学部の学科長などを務め、学術活動だけでなく、多数の企業の管理職向け研修にも携わる。著書に『ストレスと上手につき合う法』『職場のメンタルヘルス実践ガイド』など多数。
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