人の意見が役に立つんかい
僕は、気の合う仲間とグループ旅行に出かけることも多いのですが、それ以来写真は撮らない、カメラは持たない、物は買わない、という流儀です。空港で携帯の電源を切り、そこからはひたすらボーっと楽しんでいます。写真なら、だれかが撮ってくれたものを後で分けてもらえばすみます。「二度と来ないんやから」そこでしか見られない光景を目に焼き付け、仲間との交流を大いに楽しめばそれで十分です。
「情報」にもあまり囚われないことです。
何かおいしいものが食べたいな、と思ってホテルの人に聞くと、たいてい「うちのレストランが美味しいですよ!」となるので、「近くの」と改めて聞くと、「じゃあ、こういうところがあるよ」と教えてくれます。ぶらぶら歩いてボーっと町中を見ていたら、なんとなく分かってきます。
地元の人がむすっとした表情で食べている店、何人かでげらげら笑いながら楽しそうに食事をしている店。2軒、3軒と自分の目で確かめているうちに、ここという店が決まります。そうやって入ってみて、多少失敗することがあっても、それはそれでいいじゃないですか。
ガイドブックを頼りにする人もいるでしょうが(ミシュランはさすがに外れが少ないことは認めますが)、僕は「人の意見が役に立つんかい」と鷹揚に構えて旅を楽しむことにしています。(出口治明)