2016年秋シーズンの連続ドラマが一通り出揃った。刑事モノや医療モノ、ラブコメディーなど、今季も多種多様なドラマが視聴者の気を引こうと工夫を凝らしている。
「ドクターX」、「相棒」(いずれもテレビ朝日系)と人気シリーズが高視聴率を記録する中、平均視聴率12.33%(10月25日現在)と善戦しているのが、「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」(日本テレビ系水曜22時)。これまで映画やドラマなどでは光が当てられなかった、出版社の校閲部を舞台にしたストーリーが話題だ。
イヤイヤ仕事を始めてみると
石原さとみが演じる主人公・河野悦子はオシャレが大好きで、長年愛読しているファッション誌を出版している「景凡社」の編集者になるべく、新卒採用から毎年面接を受け続けている。
7年目でようやく採用に漕ぎ着けたが、配属されたのは「校閲部」。印刷前の原稿を読み、言葉遣いや文字の使用、事実関係に間違いがないかチェックする裏方仕事だ。「結果を出せば編集部に行けるかも」と茸原部長(岸谷五朗)におだてられイヤイヤ仕事を始めるが、徐々に校閲の仕事に魅力を見いだし、校閲部の面々も悦子の素直さと情熱に心を動かされていく――。
第2話(10月12日放送)で、悦子は主婦・亜季(ともさかりえ)の節約術ブログをまとめた書籍の校閲を担当することに。その内容に大いに興味を持ち、編集担当の貝塚(青木崇高)が「ブログ本の仕事なんて......」とイマイチやる気を見せないのをいいことに、校閲の仕事を越えて筆者と直接やり取りし、どんどんアイデアを出していく。
ついに書籍は完成、いよいよ店頭へ......となったところで、表紙の「POCKET」の文字が「POKET」と、脱字に気づかず刷られてしまっていたことが発覚。見逃した悦子自ら、正しいつづりのシールを上から貼るという対応を取ることに。
校閲部総出で徹夜の作業をして、何とか発売に間に合わせたが、亜季のデビュー作を自分のミスで汚してしまったとひどく落ち込む悦子。しかし亜季は、出版記念イベントで、悦子や景凡社への感謝を述べた上、
「刷り直すと莫大なお金がかかるそうです。普段1円すらケチっている私の本には、訂正シールがお似合いだと思いませんか」
と来場者を笑わせ、悦子は笑顔を取り戻す――そんな内容だった。
「身にしみる」「胃が痛い」
特にこの回は、お仕事ドラマとして多くの人の心に響いたようだ。
ツイッターでは、出版社の公式アカウントから続々と、
「今回の校閲ガールは身にしみるなあ...シール貼りはきつい......」(日本経済新聞出版社)
「きゃー、カバーの誤植...す、刷り直しとか...シール対応とか...また胃が痛い...」(平凡社ライブラリー)
「以前、営業にいたとき雑誌コードを間違えて、訂正シール貼りを部員総出でする失態をやらかしたのがこのアカウントです。しかも2回も。。。」(平凡社総務)
と、「身につまされる」という感想が発信されたほか、
「昔々、倉庫でシール貼りしたことを思い出した。ミスした人の恐縮の姿に、さらに昔、自分がミスした時のことも思い出してしまう。結構胃が痛い」
「あのシール貼り。わかるなー、情けなくて、終わらなくて。出版社だけじゃなく、いろんな仕事でも経験あるのではないか」
と、自分の過去のミスが思い出されて辛い...というビジネスパーソンも。
気の遠くなる作業として描かれていた「シール貼り」だが、職場の仲間との絆が確かめられるシーンでもあった。
「校閲ガールのシール貼り作業、めっちゃ楽しかった 毎日、、とは言わないけど、毎週でもやりたいあれ!!!」
と、むしろ魅力的なエピソードと捉えた人もいるようだ。ほかにも、視聴者からは、
「図書館に住みたい!っていうくらい読書大好きな娘。校閲やりたい!面白い!ってハマって見てた」
「校閲ちょっとやってみたい」
と、出版を縁の下で支える仕事に興味を持った人が少なくない様子。
まさか校閲志望の若者が増えるなんてことはないだろうが。(MM)