遅まきながら、最近「断捨離」にハマっている。 書店でさまざまな「断捨離本」を立ち読みしていると(立ち読みなんてズルいが、この手の本だって場所を取るのだ)、いらない服やカバンを大量に捨てることで気分がスッキリし、あまつさえ「本当にほしいもの」を見極める力がつき、お金まで貯まるという。すごいではないか。捨てるだけで貯蓄体質になるなんて、こんなウマイ話はない。早速、服やカバン、水着などを処分した。さて本当に、物を捨てただけでお金が貯まるのか?
「ときめかない」物は捨てる
「物を捨てる基準は、ときめくか、ときめかないか」
大ベストセラー『人生がときめく片づけの魔法』(サンマーク出版、2010年)の著者、近藤麻理恵さんは言う。その断捨離術はシンプルで、服でも古い本でも、その物に触れてみて「ときめき」を感じれば残す、感じなければ捨てるというもの。ときめかない物をどんどん捨てることで、身の回りが「ときめく物」ばかりになり、ハッピーになれるという。
さすが、米「TIME」誌の「世界で最も影響力のある100人」にも選ばれた片付けマスター、近藤さんの片付け術だけあって、ものぐさな私でもすぐに実行できた。友人にもらったニットのトップスは、「当時は贈り物だし断れなかったけど、デザインだけみると『ときめかない』な~」とゴミ袋へ。大学生の頃好きだったブランドの、フリルがついたスカートも、今触れてみると何だかときめかない。もう着ないと直感。ポイ。
デザインはちょっとダサいけど、着やすいからと残していたロングスカートも、触ってみるとあら不思議、もうときめきがない。ポイ。きっと、この服と私の蜜月期間は終わったのだ。今まで楽しかったよありがとう、寂しいけどさようなら、ポイ......と、まるで恋人とのライトな別れを繰り返しているような感覚になってくる。
確かに「見極める力」がつき
「ときめく or ときめかない」は、物に対する恋心の有無かもしれない。古いけれども情が湧く服は、『古女房』や『濡れ落ち葉亭主』のようなものだろうか。ときめきはないが情はある。だから残しておこう......とはならず、あっさり切り捨てるのが「こんまり流」であるが。
結局、クローゼットの中から引っ張り出した「ときめかない物」は、45リットルのゴミ袋1つ分に膨れ上がった。捨ててしまおうかと思ったが、セコイ私はゴミ袋をリサイクルショップへ持ち込んだ。「買取価格が分かりましたら、番号札でお呼びします」と言われ、待つこと15分。
「いくらになりますか?」「10円ですね~」......え? そんなもの? せめて100円くらいにはなると思っていたのに。「状態によってお買取できないものもありましたので」と、きわめて業務的なこの店員もきっと、鑑定しながら「1つも『ときめく』物がないな、ゴミばっかり」と舌打ちしていたに違いない。
手渡された10円玉を小銭入れにしまい込み、帰りに「ファッションセンターしまむら」へ寄った。ほんの暇つぶしのつもりが、なぜか「素敵な服」がいつもよりたくさん見つかる。
ハッと気づいた。 服への「ときめき」を判断する力は、物を捨てる際にも有効だが、買うときにまで発揮されてしまうのである。「これ、ときめくから欲しい!」と、私はまた服を買ってしまう。ときめきを判断する力を研ぎ澄ました結果、目が肥えて欲しいものも増えたのである。 結局、10円の儲けどころか3000円超の赤字。トホホな断捨離であった。(北条かや)