日銀のマイナス金利政策導入後、「個人向け国債」はブームといえるほどの人気を集めている。財務省が2016年10月6日発表した16年4~9月期の応募額は1兆6293億円と前年同期比52%増。年度上期での増加は3年ぶりで、2011年度以降で最高となった。
マイナス金利政策で有利に
マイナス金利政策によって銀行預金の金利も下がり、定期預金の金利は軒並み年0.01%となった。そうした中で、個人向け国債が売れてきたのは、個人向け国債には年0.05%という最低保証金利があるからだ。
0%になることはないという最低保証金利が、ほかの金利が軒並み下がったことで急浮上、相対的に有利になったのだ。
2月以来、年0.05%を続けている個人向け国債には、固定3年、固定5年、変動10年と3種類ある。固定3年、固定5年の利率は満期までそのまま。
変動10年の利率は、市場で売買されている10年国債の利回りが上昇すると上がる仕組みとなっている。この先10年間も、いまのような低金利が続くはずはないとみれば、変動10年は魅力的な金融商品といえる。変動10年の販売額が大きいのはこのためだ。
人気の秘密は各社異なる...
だが、人気の秘密はほかにある。証券会社の個人向け国債キャンペーンだ。ネット証券と大手証券などで額に差があるものの、購入金額に応じてキャッシュバックを受けられるのだ。
100万円以上の購入が対象という会社が多いが、個人向け国債の購入自体は1万円以上1万円単位、年12回募集している。
たとえば、Aネット証券で個人向け国債を100万円購入すると、キャッシュバックは2000円。500万円で1万円、1000万円で2万円。
B大手証券は100万円で3000円、500万円で2万円、1000万円で5万円。大手証券のほうがネット証券より金額が大きく、増加の幅も大きい。
また、中途売却には条件があるが1年経てば可能で、キャッシュバック分を返す必要はない。1000万円で5万円のキャッシュバックを受け、1年で売却すると、実質年0.5%の金利がついたのと同じ。購入者には魅力的だ。
では、キャッシュバックの原資はどこからくるのか?
国は金融機関に、額面金額100円につき40銭あるいは50銭の「募集発行事務取扱手数料」を支払う。金融機関は売れば売っただけ、0.4%あるいは0.5%の手数料をもらえるわけだ。メーカーの販促金を原資にして値引きする家電ディスカウント店と同様である。
タンス預金や銀行預金よりマシとはいえ、最低の利率をもらうよりキャッシュバックに目が行くのは当然のなりゆきだ。(阿吽堂)