なぜ人は変われないのか
ハーバード大学ロバート・キーガン教授らの著書『なぜ人と組織は変われないのか』に、こんな指摘があります。
「食生活を改めたり、運動したり、喫煙をやめたりしなければ死に至る、と医者から警告を受けても、実際にそのように自分を変えることのできる人は7人に1人にすぎない。残りの6人も、決して長生きしたくないわけではないし、自己変革の重要性を理解していないわけでもない。何を変えればいいかの道筋も明確に示されている。それでも変えられない。自分の命に係わるようなことでさえ自己変革を成し遂げられないのだから、リーダーが自己変革に挑むのは大変に難しい」
キーガン教授はその理由を、
「人は常になんらかの『裏の目標』に突き動かされているから」
としています。さらに「その『裏の目標』はあなたの意識の産物である」とも。
「裏の目標」とは、人が生まれながらに持っている、あるいは何かのトラウマに起因する、ある種の潜在意識と言えるものかもしれません。S社長には、自分を変えることで会社のイメージも変えたいという「表の目標」がある一方、飾り気のない自然体の自分に見られたいという「裏の目標」もあり、結果として今の服装選択に至っているといえます。
結論としてキーガン教授は、
「『裏の目標』に対処する能力を磨かなければ自己変革もその先にある組織変革も成し遂げられない」
と主張しています。そのためには「裏の目標」の見える化が不可欠であり、自分が「裏の目標」を見ようとしない、あるいは見せようとしないなら、問題は決して解決しない、というのです。タバコをやめた7人に1人は見える化ができた人なのです。