専門性もたない総合職は哀れ 自分の将来を厳しく見つめよ(江上剛)

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「会社ではスペシャリストを目指すのがいいのでしょうか、それともゼネラリストでしょうか。教えてください」

   最近は、入社時から専門職コースもあるようだ。銀行には総合職、地域特定職、専門職と3つのコースがあるらしい。

優秀な学生が「専門職を受けたい」

私に何のとりえがあるというのか
私に何のとりえがあるというのか

   ある人事担当によると、優秀な女子学生が面接に訪れ、専門職コースを受験したいと言ってきた。人事担当は、彼女が優秀だったので「総合職はどうか?」と聞いたが、「専門職がいいです」と譲らない。

   総合職なら、どこに転勤するか、どんなキャリアメイクできるか分からない。しかし特定職なら、ファイナンシャルプランナーの道が広がる。銀行で勉強させてもらって、ひょっとしたら将来ファイナンシャルプランナーとして独立も可能だ。そうすると収入は才能次第。こんなバラ色の未来を描いているのかもしれない。

   私が社会人になったときは、こんな区分はなかった。会社の命令でどこにでも飛んでいけ、出世も頑張り次第だ、人参をぶら下げられて、前進、前進、また前進という時代だった。

   ところが今は、少子高齢化。一人っ子だ。マイルドヤンキーと呼ばれ、ジモティ(地元大好き人間)も多い。

   親の介護などを考えると、アフリカや中国に行くことはできない。そんな将来像を描いたら、スペシャリストや地域特定職を選択するべきだろう。

   昇格昇進に天井はあるが、地元を離れなくてもいいというメリットがある。最近、イオンは地域特定職でも役員への道を拓く制度をつくるとの報道があった。

   地元密着のスーパーにとっては当然の制度変更だろうが、それだけ地域特定職を選ぶ人が多いことも理由なのではないか。

江上 剛
江上 剛(えがみ・ごう)
作家。1954年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行築地支店長などを務める。2002年『非情銀行』で作家としてデビュー。03年に銀行を退職。『不当買収』『企業戦士』『小説 金融庁』など経済小説を数多く発表する。ビジネス書も手がけ、近著に『会社という病』(講談社+α新書)がある。
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