解雇した4人が再起を助け
そんな横暴社長に、意見をする部下は誰もいなかった。我が道を突っ走っていた南原氏の人生が暗転したのは、2005年のある日。大口の取引先が破たんし、連鎖倒産のような状態になった。「マネーの虎」終了からわずか1年で、100億円の損失を出してしまった。
「全社員を路頭に迷わせてしまう」という恐怖にさいなまれ、自社ビル、輸入済みの車などの資産を売却、必死に会社の再建を図ろうとするもやはりうまくいかず、社員263人全員の解雇を決断した。
ところが南原氏が案ずるまでもなく、ほとんどの社員はよその会社に再就職できた。「無能と思っていた社員はみんな有能だった」のだ。
本人はというと、「ネットオークションで会社の備品を売って日銭を稼ぐ」「1日1個の菓子パンで乗り切る」奈落に転落したのが45歳。求人誌を見て面接に行っても「お前が来たらお前が部長になっちゃうだろ?」「会社を乗っ取られるんじゃないか?」などと、けんもほろろに断られた。
一時期は六本木や麻布十番で野宿するホームレス生活を送るまでに落ちぶれていたが、そんな南原氏に救いの手を差し伸べたのは、氏がかつてバカにしていた「遊んでる社長」だった。
知り合いの会社の空きスペースを借りて人材派遣会社を始めると、ほどなく以前解雇した社員4人が戻ってきた。その感激を思い出しては、番組で涙も見せた。
「これからは社員を信頼しよう」と決意した南原氏。昔の「しくじり」を反省した今、社員約3000人、年商約100億円の社長に返り咲き。笑顔で社員とコミュニケーションを取り、社員の意見もよく聞き入れる。交流を深めるため食事に誘う機会も増えた。
「社長にとって社員は一番の財産である」と言い切るほど、すっかり牙を抜かれた南原氏だが、年商については「まもなく1000億円に」と、かつての「虎」の片鱗をちらりと見せた。
「ドン引き」の過去から一転、すっかりまともになって再び成功を収めている善玉経営者に、視聴者からは
「かつての冷血社長が、笑顔が似合う人になってた。人は変われるんだなとしみじみ思った。南原さん、すごいわー」
「南原社長のどん底の時に戻って来てくれた社員が4人いたことに泣いた」
「しくじってから本当に反省して、それをきちんと今実績に出して這い上がってる。こういう人の話こそ笑いで終わるだけでなく感動もある。素晴らしい!」
などなど、絶賛の声が相次いだ。(MM)