上から目線上司と付き合うには 「勝たせ上手」に徹すること(高城幸司)

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   ヒエラルキーとは、階層制や階級制のことで、おもにピラミッド型の組織構造を指します。もともとカトリック教会や正教会などが階層的な組織を持っていたことに由来し、例えば、カトリック教会なら教皇―大司教―司教―司祭というヒエラルキーが存在します。

   これが、職場となると、上司―部下や先輩―後輩という具合に階層的になっています。このヒエラルキーを実感するのは、直属の上司と軋轢があるときではないでしょうか。

職場のヒエラルキーは破壊できないので
職場のヒエラルキーは破壊できないので

私が経験した「ダメだし」上司

   私もヒエラルキーを体感したことがあります。入社して管理職としてのびのび仕事ができていたのですが、部長が交代して状況が一変。

「何事もすべて報告して、判断を仰ぐようにしてくれないと困る」

と言われ、それから事細かに報告するように心がけました。

   ところがダメだしばかり。修正して「これでどうでしょうか?」と何度話しても受け入れてもらえない。このままでは仕事が進まない状態になる......と危機感を募らせて役員に相談をしたところ、

「(上司と)話し合いが足らないのではないか」

と突き放されました。

   おまけに役員から部長に「高城君が君を飛ばして、自分に相談に来た。もっとしっかりマネジメントするように」と教育的指導が入ったことで、自分と上司の関係は最悪な状態になってしまいました。まさにヒエラルキーの包囲網で袋小路に追い詰められた状態。こういう状態でこそヒエラルキーは痛感されるものかもしれません。

ヒエラルキー破壊は許されない

   ただ、実感がなくてもヒエラルキーは存在するもの。さらに言えば、時代は変わっても、ヒエラルキーの上位にいる人は強い立場です。時には、理不尽な人物が上のヒエラルキーにいて、この構造を破壊したいと感じることがあるかもしれません。

   しかし、会社が組織で動いている以上、ヒエラルキーはその根幹を成すものです。破壊しようとする社員を会社は許しません。仮に「うちの職場はダメな上司がいるから、終わっている」と役員とか社長に組織の批判を口にしたらどうなるか?   おそらく、会社であなたの立場がプラスに向くことはないでしょう。

   現状にひたすら耐えることを勧めているのではありません。コミュニケーションを戦略的に駆使して居心地がいい職場環境に改善することは可能です。

   自分はヒエラルキーの上にいるのだから「上から目線でモノを言うのが当然」と感じて、接してくる人がいます。大いに困った存在です。そんな相手に対してどのように対策をしたらいいのでしょうか。例えば、

「そういうこと言ってるからダメなんだよ」
「まだまだだな。努力が足りないんじゃないの」
「君にはわからないかもしれないけど」

のような言い方で部下の力不足を断定的に決めつけたり、「まだまだ!」と必要以上に強要したり、経験や知識が不足していることを執拗に攻撃してくる人。まさに上から目線を感じます。

   私が取材した食品メーカーで、「もっとしっかりしてくださいよ」とか「どうしてできないのですかね」と部下を攻撃する上司に対し、部下たちが悩みを抱えていました。「仕事する意欲がなくなる」、あるいは「気持ちが落ち込む」といったネガティブな声をたくさん聞きました。

   ところが、上司は「指導について間違いはないと確信している」と、問題があるとは思っていない状態。おそらく、上から目線のマネジメントが永遠に続くのでしょう。そう考えると、部下は希望をなくしますよね。

   あなたが気の強いタイプなら「それは決めつけですよ」と対抗することも可能かもしれません。ただ、全面対決になり、上の立場から強権発動でもされたらたまったものではありません。いったい、どうしたらいいのでしょうか。

見下されることへの恐怖が底に

   上から目線の発言をする相手を称える言葉を返すのです。

「どのような努力をすると、先輩のようになれるのでしょうか?」
「課長はいつから、これくらい仕事がテキパキとできるようになったのですか?」

   このように問いかけると、関心はあなたではなく相手自身に向きます。おそらく、自分の自慢話を嬉しそうに語ることでしょう。ちなみに上から目線で話す感情の底には、

・自分に自信がない
・相手と比べることでしか自分を評価できない
・優越感に浸りたい

といった心理が隠れています。

   さらに、見下されることへの恐怖があるといわれています。上から目線の人は、自分が見下されることを何よりも嫌います。自分の優位性を保つために相手を見下せるポイントを探り始めます。

   ですから、気持ちよく相手を勝たせる「勝たせ上手」に徹し、自慢という名の不安を吐き出させてあげて、「これで不安が解消できればいいんじゃないの」くらいの寛容な気持ちを持てるとベスト。少なくとも、上から目線の相手に余計なストレスを背負わされるようなことはなくなります。(高城幸司)

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
「高城幸司の社長ブログ」
株式会社セレブレイン
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