1日5000円でヒモを飼う快楽 男の生活支え満たされる日々

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自然に「何かお返しがしたい」と

   彼は付き合い始めた最初のうち、少ない収入の中から色々おごってくれた。誕生日に悩み抜いてケーキを予約してくれたり、家電が壊れるとサプライズで買って来てくれたり、限定のお菓子(といってもひとつ200円ほど)を毎回持ってきてくれるなど、なかなか小憎い演出が多かったように思う。気遣いの人であった。

   そんなことがあっても、すぐに「この男性をヒモにしよう」と思ったわけではない。ただ、家事全般をやってくれるのが嬉しくて、「何かお返しがしたい」と自然に考えるようになったのだ。

   はじめは、彼がスーパーへ買い出しに行くたびに自腹を切っていた食費も、私がすべて出すようにした。2人で外食するときも、私が払うようになった。「男性と2人の食事で、女がおごるなんて格好悪い」と思う人もいるかもしれないが、一度、レジでさっそうと財布を出してみてほしい。これが気持ちいいのだ。

   毎度の食事をおごるというのは、その人の生を支える行為なのだ。私の一存で、この男は生きてもいけるし、生きていけなくもなる。大袈裟かもしれないが、この快楽に気づいてからは、彼との関係を「ヒモ」と表現することにためらいがなくなった。ヒモと言ってしまうほうが、説明しやすくラクであるし、堂々と「すべて私がおごっています」と言える。

   今ではすっかり、「ごちそうさま」の声が嬉しい私である。彼と1日過ごすと、平均5000円くらいの出費になる。1か月の半分一緒にいるとしても、7万5000円の支出。この数字、北欧などで導入が噂される「ベーシックインカム」の想定額と同じくらいなのだ。

   そう、私はヒモに金銭を与えることで彼の「最低限度の生活」を保障している! と、大それたことを言ってみる。この快楽はやってみた人にしか分かるまい。

   ぜひ皆さんも、ヒモを見つけて積極的に贈与してみてはどうか。きっと人生が豊かになると思う。貯金は減るけれど。(北条かや)

北条かや
北条かや(ほうじょう・かや)
1986年、金沢生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。近著『インターネットで死ぬということ』ほか、『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』などがある。
【Twitter】@kaya_hojo
【ブログ】コスプレで女やってますけど
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