研修企画会社の担当者Iさんとの打ち合わせの中で、こんな相談を受けました。
「最近の若い管理者はとにかく叱れないのですよ。当社の目下最大のテーマは、管理者向けの『部下を叱る』指導です。何かいいアイデアはありませんでしょうか」
そう聞かれた私は、頭の中で答えを探しながら、ひとつ思い出したことがありました。それは少し前に聞いた、後輩の人事コンサルタント氏のこんなボヤキでした。
一方がすっぽり抜け落ち
「オーナー企業のトップというのはなんでこうも自分勝手で直情的なのでしょう。いくら繰り返しお願いしても部下をほめることをせず、とにかく叱る、怒るの一辺倒。こういうタイプが実に多い。これでは、組織は引っ張ることができても、下が育ちません」
叱れない上司にほめられない社長。好対照のふたつの事象にそれぞれ頭を悩ます人がいるというわけです。
子供の教育でも言われることですが、指導される側のやる気を上げつつ成長に向かわせる黄金比率は「ほめる:叱る=3:1」とされています。叱れない上司も、ほめられない社長も、大切な要素の一方がすっぽり抜け落ちてしまっているわけですから、そのままでは部下の成長はなかなか望めません。
私がコンサルタントとして携わった企業にも、叱れない上司やほめられない社長が少なからず存在し、私なりに彼らの行動改善を支援してきました。その過程で、叱れない、ほめられない理由を探ってみようと当事者からいろいろ話を聞いてみて、象徴的と思われるいくつかの回答を得ました。