2人が最終選考まで残ったが
その結果、受験者総数が1900人、うち大卒者以外の受験者が160人。記者・カメラマン・業務職、合わせて30人が採用されました(うち既卒5人)。出身大学は「早稲田大学八名、慶応大学四名、東京大学三名、一橋大学、東京外語大学、同志社大学各二名、一名だけが明治、立教、関学、横浜国大、上智など九大学」(同記事)とあります。既卒・大卒者以外では、記者職で慶応大中退者、カメラマン職で高卒者が最終選考まで残ったが、最後に落ちてしまった模様。
「二人が最終選考まで残りましたが、どうしてもワクに入りきらず、残念ながら落としました。(中略)学歴不問をうたう以上、(大卒者と同じ)試験を変えるべきではないか、という意見もあったのですが、そこまでは踏み切れませんでした」(石原部長)
「週刊文春」の記事以後、毎日新聞社の学歴不問採用について、関連する文献は筆者の調査では出てきませんでした。再び大きく取り上げられたのは、就職情報誌「就職ステップ」1982年6月号でした。「学歴無用といわれるマスコミ 毎日新聞に大学3年中退で入社した加藤暁子さんの実力」という記事です。
それによると、高校時代アメリカに留学していた加藤さんは上智大学外国語学部比較文化学科(現在の国際教養学部)に入学。文学部新聞学科の「テレビ制作」の講義にもぐり込み、月2回放送の学内放送「ソフィア・ガイド」のニュースキャスターとなります。
「十二、三名の仲間たちはほとんどが一年先輩。彼らが四年になり」(同記事)、就職を意識するように。就職相談室で毎日新聞社の「学歴不問」を見て、「ほなら、ためしに受けてみるか」(同)。結果、内定が出たそうです。
記事では、毎日新聞社の学歴不問採用について、「(実施)三年にして、高卒、中退を含めて適用された未卒者は一〇名となっている」とあります。年30~40人の採用枠で、高卒・中退者が3年で累計10人採用されたのなら、まずまず多いと言えなくもありません。
しかし、取り上げられているのは上智大の才媛です。「中退」と記事タイトルにはありますが、現代の大学でいうなら、「飛び入学」に匹敵します。
ちなみに、加藤暁子さんは入社翌年に上智大学を卒業。毎日新聞の福岡総局、経済部、外信部などでキャリアを積み退職。現在は、榊原定征・日本経団連会長を塾長に戴く「高校生のための日本の次世代リーダー養成塾」の専務理事・事務局長です。