「バカヤロー。お前そういったじゃないか」と課長が怒鳴る。「言っていません」と部下が反論します。
「メールを見ろ、書いてあるじゃないか」
「課長、思い違いですよ、意味が違います」
水漬けのサルのごとく
なじりあうこと3時間、JR新橋駅近くの居酒屋風景です。翌朝の職場では2人とも疲れ切った顔で心身不調を訴えます。放置すれば「心身症」と診断されかねません。
心身症(Psychosomatic disease)とは「心理的なストレスが主に原因となって体の病気になること」をいいます。例えば、過敏性腸症候群や緊張性頭痛などが挙げられます。カーッとなるなどの、情動に影響を与える人間関係ストレスは心身の不調を招きます。仕事のできる人は「腹を立てて」も、問題解決に至らぬばかりでなく仕事の能率や職場の雰囲気を損ねることを知っています。
旭川医大の並木正義教授はサルを固定し、水に漬けにしてストレスを与えると2、3時間で胃の中に出血性ビラン(ただれ)が発生するという実験結果を発表しています。ストレス社会では「うつ病」が表に出ていますが、「隠れた問題」として休職まで行かない日常的心身の不調があります。
病院で診てもらっても、先生は「身体的異常所見はありません。ストレスですよ」と言います。ストレスから逃れることのできない現代社会では「水漬けのサルのごとく」心身症になりやすいのです。