社外トップ迎えられぬ中小は?
今の時代、組織やリーダーには「常に変化し続けなければならない」というテーマが与えられています。高度成長に支えられて自らも成長し、その余禄にあずかって生きてきたT社にとっても、先代の時代とはちがう「変化」が求められているのです。
ところが人間の脳は、よほど強い刺激を得ない限り基本的に「現状維持」を求める仕組みになっています。長年、強いリーダーシップを持つトップの庇護の下で安穏とした日々を過ごしてきたN社長のような人物は特に、いきなり「変化」を求められてもなかなか難しいのかもしれません。
ではどうすればいいのか。「変化」にはフレッシュな視点が欠かせません。「変化」のきっかけとなるフレッシュな視点をいかにして持つかが重要なのです。世界の企業で新しいトップが 社外から 雇われるケースが増え、近年は我が国においてもそのような傾向が強くなってきています。それも「異質なトップによるフレッシュな視点の注入」という考え方とつながっているように思えます。
米国サフォーク大学にはこんな調査もあります。
同じ業界からトップを迎えている企業と異なる業界からトップを迎えている企業とでは、半年以内の短期間では同じ業界からトップを迎えた企業のほうが業績や株価パフォーマンスの平均がいいけれども、3、4年後にはその実績が逆転し、異業種からトップを迎えた企業が完全に上回るというのです。
中小企業のように、簡単には社外からトップを招けない場合はどうするのか。現トップを中心として、組織内に「新しい視点」や「これまでとは異なる観点」を得る機会や環境を創り出せればいいのです。そのために必要なことが、トップ自ら異業種の外人脈と接点を増やすことです。私がY常務に乞われてN社長を訪ね、交流フォーラムにご案内しようと思った理由は、そこにありました。
N社長との面談で、私はいきなりフォーラムのご案内をするのではなく、フレッシュな視点による「変化」の重要性の話からはじめて徐々に、異業種の人たち話を聞き、意見を交換し、人脈を広げることの有効性をお伝えしました。すると社長は、「実は会社をどう時代に順応させ変えるべきか悩んでいた」「異業種の視点をぜひ吸収したい」と前向きに受けとめてくれ、次回11月のフォーラムへの参加を約してくれたのです。ある意味、予想外の嬉しい反応ではありました。
人見知りなN社長の先導役として、拙フォーラムへの参加をきっかけに、他の異業種交流の場もご紹介しつつ、T社の来るべき「変化」に資する「新しい視点」や「これまでとは異なる観点」の獲得に向けたサポートをさせていただければと思っています。(大関暁夫)