2015年度の寄付金が1653億円に急増したという「ふるさと納税」。2000円の負担で魅力的な返礼品がもらえ、地方の活性化にも協力できるとあって、ますます人気が高まっている。ビジネスチャンスとみた企業も相次いで登場し、テレビCMもオンエア中だ。
地元自治体と国は割を食う
寄付を受けた自治体も、寄付をした人もハッピーなふるさと納税だが、利害関係者はほかにもいる。返礼品の業者、そして寄付をした人の地元自治体と国だ。
業者はもちろんハッピー、税収が減る地元自治体はアンハッピーと誰しも考える。ではどの程度か。
たとえば、確定申告不要のワンストップ特例制度を利用して1万円を寄付、6000円の高級牛肉を返礼品でもらったケース。
まず寄付をした人は地元自治体から8000円(1万円-2000円)税金が戻り、6000円の高級牛肉が手に入るので、4000円(6000円-2000円)のトク。
寄付を受けた自治体は、寄付金額と高級牛肉の差額4000円のトク。
牛肉販売業者は、自治体から6000円の発注を受け、原価との差額だけトク。
税金を持っていかれた地元自治体は、寄付金額のうち8000円を減税しなくてはならず、うち75%の6000円は国からの地方交付税で補われるので2000円のソン。
国は地方交付税特別会計で6000円のソン。
都も取り組んでみてはどうか
ふるさと納税の目的は「地方活性化」。寄付を受けた地方の自治体と業者にお金が入って、その自治体が活性化することはいいことだろう。また、地方活性化のために国がお金を負担するというのも納得がいく。
問題は税収減となる地元自治体だ。
たとえば東京都が2015年度に受け入れた寄付金額は約12億円、2016年度に失う個人住民税は約262億円、差し引き約249億円の赤字と総務省は発表している。東京都はかねてからふるさと納税に反対ないし静観の姿勢であり、都内の区市町村の取り組みも消極的だ。
こうした自治体も地方の自治体同様、ふるさと納税に取り組めば、国の負担で両方の自治体が活性化する可能性もある。
魅力的な返礼品が地方だけにあるとは思えないのだが。(阿吽堂)