導入企業から妙な声が続々
パネラーの皆さんの発言を聞きながら、そんな思いを巡らせて一人ほくそ笑んでいると、ファシリテーターのF氏から意外なオチが披露されました。
「皆さん、このS社のシステムなのですが......。実は、導入した会社からその後、妙な声が続々と聞こえてくるのです。『システムは期待通り素晴らしく何の問題もないのだが、それを使いこなせる社員がいない』と。言ってみれば、フェラーリは買ったものの、その性能を引き出せるドライバーがいないという状態です。優秀な経営者ほど、提案に強く共感すれば高い買い物でも即決してしまう傾向があるのですが、忘れてならないのは、経営では常に『投資の前に人を育てよ』です。どうか皆さん、好調時ほど念頭に置かれますよう」
発言をした方の顔つきが一瞬にして引き締まりました。パネラーの皆さんが「変革」や「飛躍」につなげる投資に前向きな発言をしたところでの、見事な切り返しでした。
好事魔多し。業績好調で投資資金が潤沢な企業ほど、投資がすべてを解決してくれるかのように思えてしまうものですが、組織とは、どんな状況にあろうと、規模が大きかろうと小さかろうと、常にヒト優先で発展するもの。そんなF氏の話の落としどころに、私も強く共感した次第です。(大関暁夫)